ルネサス エレクトロニクスは、2025年にSiCパワー半導体の生産を始める。2023年5月19日にオンライン開催した戦略説明会「2023 Capital Market Day」において、代表取締役社長 兼 CEOの柴田 英利氏(図1)が明らかにした 柴田氏プレゼンテーション資料 。
同社は2022年11月にドイツで開催のエレクトロニクス国際展示会「electronica 2022」において、SiCパワー半導体事業への参入を宣言したが*1、具体的な計画は示してこなかった。それを表明したのは今回が初めてである。2023年から投資を始め、2025年に生産を開始する(図2)。SiCパワー半導体は同社の高崎工場の6インチ(150mm)ウエハーラインで造る(図3)。
柴田氏は、パワー半導体工場として再開する甲府工場の状況についても話した*2。同社は2022年に甲府工場の再稼働へ大きな投資を行った*3。台湾TSMC(台湾積体電路製造)進出で沸く熊本県とは異なり、「山梨県には大きなコンペティターがおらず、従業員の採用が順調に進んでいる」(同氏)。甲府工場の12インチ(300mm)ウエハーラインを使ったIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)パワー半導体の生産も2025年に開始する予定である。なお、現在のところ、甲府工場でSiCパワー半導体を生産するつもりはないとのことだった。
「パワー半導体では我々はかなり後発だ。例えば、EV(電気自動車)向けIGBTの現在の市場シェアは10%程度と推定している。甲府工場での生産が始まれば、それを2倍、3倍に増やせる」(柴田氏)。同氏によればシェアは小さいものの、「IGBTの従来品と現行品の顧客からの評判は高い。その評判をSiC事業に生かせる」(同氏)と自信を示した。「現在、SiCの市場は小さいが、将来、非常に大きくなることは間違いない。我々に対するSiCへの引き合いは、(生産していない)現在でも、非常に強い。2025年に生産を始めれば、順調に事業を進められる」(同氏)。