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カギを握るのは産業向けツールとの「連携性」

シリコンスタジオ株式会社 テクノロジー事業本部 新規事業開発部 担当部長 向井 亨光氏
シリコンスタジオ株式会社 テクノロジー事業本部 新規事業開発部 担当部長 向井 亨光氏
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 「ゲームエンジンは、ゲーム開発に必要な3Dグラフィックスの描画、アニメーション、それを支える物理計算などの仕組みを実装した、いわば『ゲーム開発向けのパワーポイント』のようなものです。これを使えば、既存ツールでは実現が困難だった精緻な3DCGの作成や、リアルタイムな表示が可能になります(図1)。それらの機能は、ものづくりの世界におけるデジタルツインに不可欠な機能でもあります。そこで我々は、ゲームエンジンをデジタルツインの実現に欠かせないツールだと位置付けています」とシリコンスタジオの向井 亨光氏は語る。

図1 ゲームの3DCG(イメージ)
図1 ゲームの3DCG(イメージ)
高精細で美しい3DCGはいまやゲームに欠かせないものになっている。このようなハイクオリティーな3DCGを、産業の現場に適用する(画像はグローバルイルミネーション「Enlighten」デモより)
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 同社のソリューションの最大の特長は、ゲームエンジンと、産業の現場で使われるCADやデザインレビューツールなどとの連携性を重視している点にある。ツール間で過不足なく情報を受け渡せるようにすることで、ゲームエンジン側でデータを修正したり、足りない情報を補ったりする工数を最小限に抑えられるという。

 例えば、自動車パーツを開発するメーカーが、デジタル空間上でデザインレビューを行う場合を考えてみよう。CADで設計したマテリアルのデータがゲームエンジンに引き継がれない、あるいは一部が欠損して正しく描画できないケースが考えられる。また、データの修正・最適化など、ゲームエンジン上で動かすためのパフォーマンスチューニングが必要になることもあるだろう。「そのための手間と時間が、開発プロセス遅延の要因になります」と向井氏は言う。

ゲームとものづくり、両方のノウハウを生かす

 それに対してシリコンスタジオでは、主要なCAD製品に対応したマテリアルライブラリーや、ゲームエンジン上で多様なオブジェクトを動かす仕組みなど、連携を強化するソリューションを用意している。一例が、Autodeskの3Dビジュアライゼーションソフトウエア「VRED」からEpic Gamesのゲームエンジン「Unreal Engine4」へのデータ変換を行うソリューションだ。もともとUnreal Engine4は「Datasmith」というデータ変換ツールを標準で提供しているが、これをさらに強化することで正確なデータ連携を実現するという。

 「これはいわば、拡張版Datasmithとも呼べるソリューションです。Unreal Engine4上にVRED互換のマスターマテリアルを独自に整備し、VRED上でのオブジェクトの見た目を高い精度で再現できるようにします」と向井氏(図2)。設計者・開発者の意図をどれだけ正確に表現できるかはデジタルツインの「肝」となる。デザインレビューでのイメージのずれや、それによる開発手戻りなどを防ぐことができる。

図2 VREDからUnreal Engine 4へのデータ変換(イメージ)
図2 VREDからUnreal Engine 4へのデータ変換(イメージ)
Unreal Engine 4付属のDatasmithでは、右下の二つのオブジェクトの質感データが欠損し白地になっている。一方、シリコンスタジオの変換ツールではより正確に再現されている
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 加えて、シリコンスタジオのエンジニアが顧客環境をアセスメントするデータ最適化コンサルティングサービスも提供する。パフォーマンスと品質を両⽴したデータ変換を行うための環境を実現できる。

 「当社は、3Dグラフィックス全般を扱う米Silicon Graphicsの日本法人である日本SGIからエンターテイメント領域を切り出すかたちで誕生した会社です。製造業の顧客を多数有していた日本SGIのメンバーも多く参画しており、ゲームとものづくり両方の知見を備えている点が他社にない強み。このような土台があるからこそ、デジタルツインの実現を強力にご支援できるのです」と向井氏は述べる。

製品検査、自動運転アルゴリズムの開発などで事例が登場

 同社のソリューションの特長にいち早く注目し、成果につなげた企業も出ている。

 例えば、農業・産業機器メーカーのクボタは、ゲームエンジン上で稼働するCG画像合成ツールを導入し、製造物の良品/不良品判定の自動化と精度向上を目指している。実際の製造工程ではめったに出現しない不良品を3DCGで作成し、機械学習の教師データとして利用するものだ。一見しただけでは現物と見分けがつかないほどの高精細な3DCGであればこそ可能な方式といえる。「不良品の3DCGをAI分類モデルに入力し、推論を行うPoCを実施した結果、問題なく教師データとして使えることが確認できました。今後は学習を進め、判定精度を高めていく予定です」と向井氏は紹介する。

 もう1つは自動運転技術に関する事例だ。ここ数年、自動車関連メーカーから、走行映像をCGで作成できるシミュレーションツール開発の引き合いが多いという。

 自動運転アルゴリズムの開発に欠かせないアノテーション情報(教師データ)を自動で生成できる。また、路面や車線、ビル、街路樹など様々な自動車走行環境のパーツを用意するとともに、道路標識や路面標識、区画線の経年劣化や、信号機の点滅など、多様なバリエーションにも簡単に対応可能だという。

 このツールは、アルゴリズム開発の学習過程だけでなく走行テストでも活用できる。CGで再現したリアルな街並みの中を、日照条件や天候状況をリアルタイムに変化させながら走行するといったことが実現可能だ。「法規制や事故リスクの観点から、公道でのテストを実施する機会は限られます。ほかにも、ものづくりの現場では同様の制約が多くありますが、そうした場面で、デジタルツインはますます重要なものになるはずです」と向井氏は話す(図3)。

図3 自動車走行環境を3DCGで生成
図3 自動車走行環境を3DCGで生成
自動運転アルゴリズムの開発に向けた教師データとするほか、季節や天候、道路状況などを自在に変更しながら走行テストが行える
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 現在の日本の産業界は、人材不足や技術承継などの多くの課題に直面している。この課題を解決し、企業が持続的成長を実現する上で、デジタルツインは不可欠なものとなるだろう。シリコンスタジオが提案するゲームエンジンの活用は、その実用化に向けた近道となる。

お問い合わせ

シリコンスタジオ株式会社 テクノロジー事業本部
URL:https://tech.siliconstudio.co.jp/
TEL:03-5488-7481