スピーディなデジタル活用のため内製開発の体制を整える

 もう1つの工夫が、改革後の姿を描いてから、それをデジタルで実現していくのではなく、まずはデジタルを適用して、プロセスを改善し、課題にぶつかったらデジタルを改修するという、デジタル前提かつアジャイル的なアプローチを採用していることだ。改革のスピードを速めるために、走りながら考えることを実践しているのである。

 このように同推進室は三菱重工のDXをリードするために、様々な工夫を行っているが、その中で大いに貢献しているデジタルサービスがある。サイボウズの業務改善プラットフォーム「kintone」である。

 kintoneは、プログラミングのスキルがなくとも、簡単な操作だけで業務システムを作成できる「ローコード」のクラウドサービスである。これまでに1万8000社を超える企業が導入し、Excelで行っていることが多い案件管理のような業務のシステム化、基幹システムと連携するサブシステムの開発など、様々な用途で活用している。その中には、デジタルによる変革のスピードアップのために、kintoneを使ってシステムの内製化を図っている企業も多い。

 この特長が、現在優先している領域や混成集団などの考え方にフィットしていると考え、同推進室はkintoneを導入。産業機械を取扱うグループ会社の事例では、社内にあるムダで非効率な業務のアプリ化を通じてEXの改善に役立てているほか、顧客との接点強化と顧客による自己解決を促すための「ポータルサイト」、顧客からの問い合わせへの迅速な対応を実現する「問合せ管理システム」という2つのシステムを開発し、CXの向上につなげた(図)。

図 産業機械を取扱うグループ会社の事例。顧客との接点強化と顧客による自己解決を促すための「ポータルサイト」、顧客問合せへの迅速な対応を実現する「問合せ管理システム」という2つをkintoneで開発した
図 産業機械を取扱うグループ会社の事例。顧客との接点強化と顧客による自己解決を促すための「ポータルサイト」、顧客問合せへの迅速な対応を実現する「問合せ管理システム」という2つをkintoneで開発した
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 「業務アプリ開発は内製で行っており、最短1~2日でプロトタイプをリリースするなどアジャイル型で行っています。この『作って』『使って』『改善』していくスピードを実現できていることがkintoneの最大の成果です。開発システム数を稼働日数で割ると、1アプリを1.5日で開発しているペースとなります。すでに社内では『まずは、なんでもkintoneでやってみよう』という雰囲気ができつつあります」と同推進室の山本浩道氏は言う。

三菱重工業株式会社 成長推進室 デジタルエクスペリエンス推進室 CRMグループ グループ長 山本 浩道氏
三菱重工業株式会社 成長推進室 デジタルエクスペリエンス推進室 CRMグループ グループ長 山本 浩道氏

 また、同推進室でkintoneを使った内製開発を担当している大城薫氏は、kintoneの操作性を次のように評価する。「私はもともと蒸気タービンの機械保守のエンジニアでITに関するスキルは全くありません。この推進室に異動になって、使うツールをスパナからkintoneに持ち替えたばかりですが、直感的な操作でアプリを作ることができ、簡単な業務アプリならすぐに開発できるようになりました」。

三菱重工業株式会社 成長推進室 デジタルエクスペリエンス推進室 CRMグループ 大城 薫氏
三菱重工業株式会社 成長推進室 デジタルエクスペリエンス推進室 CRMグループ 大城 薫氏

 今後は、現在のプロジェクトを推進する中で人材育成などを進め、イノベーションの領域に着手するための体制を整えていくという。日本を代表する製造業である同社が、どのような変化を遂げていくのか、大きな注目を集めそうだ。

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