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熱狂の構図はかつての野球やサッカーと同じ

 eスポーツのファンはテレビを見なくなった若い世代に多い。なぜ彼らはeスポーツに熱狂するのだろうか。理由として大きいのは、若い世代が生まれながらのネット世代であることだ。リアルなスポーツは野球やサッカーのように人数をそろえないとプレーできなかったり、グラウンドなどのプレーをする場所やボールなどの用具が必要だったりする。eスポーツはリアルなスポーツのような準備が不要で、ネット環境さえあれば対戦や観戦できる。

 若い世代は「YouTube世代」でもある。音楽とゲームはYouTubeの中でも定番の人気を持つ。だが、音楽は素養がないとコンテンツを作る側には回れない。一方ゲームは、特別上手でなくても自分が対戦している様子をアップロードでき、ゲーム実況のスキルが高ければ、それを楽しむ視聴者がいる。さらにプレーがうまく、対戦動画を見たい人たちからのフォローが増えると、人気プレーヤーになるチャンスもある。そうした人気プレーヤーが登場する大会が開催されると、ゲームメーカーが賞金を付けたり、テレビで放送されたりするようになる。さらにはその中からプロが生まれ、ゲームをやらない層までも追いかけ始める──。こうして上手なプレーヤーは「カッコいい」存在となり、それがステータスとなっているのだ。

 これが近年のeスポーツ成長の背景だが、振り返ってみれば、かつての野球やサッカーと同じだ。カッコいいプレーヤーに憧れ、そのスポーツに熱狂しているのだ。「野球やサッカーはテレビを媒介に人々を熱狂させました。しかしテレビを見ない若い世代は、それに代わってPCやスマホを媒介にしたゲームの対戦に熱狂するようになったのです」(浜村氏)。

2021年4月24日に行われた「Japan University eSPORTS Championship :U-Champ. ~日本学生eスポーツ競技大会~」の様子。世界で活躍する新たな世代の選手の創出を目指し、新設されたeスポーツ大会だ
2021年4月24日に行われた「Japan University eSPORTS Championship :U-Champ. ~日本学生eスポーツ競技大会~」の様子。世界で活躍する新たな世代の選手の創出を目指し、新設されたeスポーツ大会だ
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エイジレス、ジェンダーレス、エリアレス

 eスポーツの魅力の1つはインタラクティブ性だ。リアルのスポーツのように声を出してグラウンドの選手を応援するのではなく、モニターに表示される対戦にコメントを入れて応援する。応援コメントは画面上で次々と流れ、そのコメントに対してコメントするという、観戦者同士のやり取りも面白みの1つだ。また、応援コメントにはプレーヤーが返信することもあり、さらに盛り上がる。

 そして、eスポーツの特徴でもあり大きな魅力でもあるのが、さまざまな参加障壁の低さだ。9歳の少年が県の代表になることもあれば、65歳のプロのプレーヤーもいる。世界大会で優勝したアマチュアの女性もいる。年齢によるハードルが比較的低く、性別による不利も生じない。また今後5Gで世界中がつながるようになれば、地域による制限もなくなるだろう。年齢も性別も地域も違う人々が、同じ土俵で対戦を楽しめる。エイジレス、ジェンダーレス、そしてエリアレスであることは、eスポーツの大きな魅力だ。

 「もう1つ、障壁の低さで重要なのが、身体的なハンディキャップがハードルにならない点です。北海道のある病院では、筋ジストロフィーの患者さんが、わずかな力で操作できるようにカスタマイズされたコントローラーを使って、高校生の優勝チームと見応えのある試合をしています。ハンディキャップのある人でも同じように競技に参加し、楽しめる。これはeスポーツによる社会貢献だと考えています」(浜村氏)

市場拡大や地方活性化、期待集めるeスポーツ

 eスポーツの人気を受けて、関連マーケットも急拡大している。JeSUが経済産業省から受託して進めている検討会では、2025年における市場規模として、チケットやグッズの販売、広告、放映・配信権などの直接市場で約600億円を、建設事業などイベント興行を核としたエコシステム領域と、飲食サービスなど経済活動における波及領域を合わせた全体では約3000億円を見込んでいる。シャッター商店街をeスポーツの大会会場にした徳島市など、eスポーツで街の活性化を図る自治体の取り組みもある。eスポーツは若い世代への訴求力が高く、また世界へ発信されるため、町おこしや観光へもつながると期待されているのだ。

2025年には全体で3000億円の市場規模を見込む。JeSU「日本のeスポーツの発展に向けて~更なる市場成長、社会的意義の観点から~」報告書概要を基に作成
2025年には全体で3000億円の市場規模を見込む。JeSU「日本のeスポーツの発展に向けて~更なる市場成長、社会的意義の観点から~」報告書概要を基に作成
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 JeSUでは2021年5月、「法令をよく知ってeスポーツを楽しもう! かんたんeスポーツマニュアル」を公開した。これは法的な制約の多い日本において、安心してeスポーツの大会が開けるよう、留意点をまとめたものだ。JeSUでは日本各地でeスポーツ大会が多数開催されるよう促すことで、さらなる普及を目指している。

 年齢や性別などに関係なく、多くの人が楽しめるeスポーツの日本での普及に今必要なことは、選手のステータスを高めることだ。そのためには、大きな国際大会で優勝するような日本を代表するスター選手を輩出することが鍵になる。JeSUではこのことを1つの使命として、選手の育成はもちろん、選手の目標となる大会の開催や選手たちが競い合うコミュニティーの整備などを行っている。例えばゲーム機とPCを備えたeスポーツ用練習場も、こうしたコミュニティーの1つだ。JeSUのこうした取り組みが企業や地域を巻き込み、ビジネス市場の拡大や地方活性化につながっていく。

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