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価値創造プロセスの標準化に向け、日本はリーダーシップを

 社会がこうした3つの重要機能を獲得したことで、「必然的に“価値源泉”と“創造価値”も変化していくことになります」と遠藤氏は語る。

 例えば、今までの社会における価値の源泉は「情報」にあった。情報とは、データを加工・分析・評価し、意味付けしたものである。技術の限界に合わせ、得られるデータも制約されたため、そこから生まれる情報は限定的で、創造される価値も“局所最適”にとどまっていた。

 しかし、これから到来するSociety 5.0の社会では、価値の源泉が情報から大元のデータそのものへと変わる。大量のデータを直接分析・利活用することで、より大きな価値を創造することがカギになるのだ。

 「技術の進化により、多様かつ大量のデータをリアルタイムに活用することが可能となります。AIをはじめとする先端デジタルテクノロジーを活用することで、“創造価値”も“局所最適”ではなく全体最適が実現できるようになります」と遠藤氏は説明する(図1)。

図1 価値源泉の変化と“創造価値”の変化
図1 価値源泉の変化と“創造価値”の変化
「情報」が中心だった価値源泉は多種大量な「データ」に変わる。活用範囲が広がることで、“創造価値”もより高度な要件が求められ「“局所最適”」から「全体最適」へ変わっていく
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 エネルギー問題や環境対策、医療・ヘルスケアといった社会課題に対し、これまでの“局所最適”では限界があった。遠藤氏は「徹底的にデータを利活用し、全体最適のソリューションを求めていくことによって、社会課題の解決に向けた道筋も開けていくはずです」と語る。

 そのためには、多様かつ大量のデータを収集・流通・共有することが必要であり、サイバー空間上のプラットフォームを整備しなければならない。その上で、データから様々な事象を見える化し、AIによる分析から導かれる、その先の予測と対応を基に創造した価値を実社会にフィードバックできるようにする。全体のスキームにおいてセキュリティーとガバナンスを確保することも欠かせない。

 そして、こうした価値創造のプロセスで重要になるのが、サイバー空間と実社会をつなぐアーキテクチャーとインターフェースだという。データ収集・活用のルールや仕組みには、世界標準と言えるものがまだ存在しない。個人情報はどうやって使用許諾を得て、プライバシーをいかに保護するのか。公的なデータは誰が管理し、どこまで利活用を認めるのか。データ形式の違いを意識せず利活用できる仕組みも重要だ。

 「アーキテクチャーとインターフェースの標準化競争で、日本は大いにリーダーシップを発揮すべきです。それが世界での日本の存在感を高め、事業機会の拡大に直結するでしょう」と遠藤氏は提言する。

全体最適の価値創造をバリューチェーンで最大化する

 価値創造プロセスの変革には、「個」の価値を再定義することも重要なポイントとなる。

 リモートワークに象徴されるように、人は場所やハードウエア、時間の制約から解放され、価値創造の形態は「集合型」から「分散型」へと変化した。コロナ禍がこの流れを加速した。

 「これからはリモートのメリットを生かし、個の能力・主体性を尊重するとともに、企業・業種・国境を超越した価値創造を目指すことが大切です」と遠藤氏は強調する。多様性を受け入れ、既存の枠組みを超えて人や企業がシームレスにつながる。そのためには標準化されたデジタル・プラットフォームをベースにしたバリューチェーンの構築が不可欠という。

 「1社単独では全体最適の価値創造は困難です。しかし、このバリューチェーンに基づき、高度な専門能力を持つ人や企業がつながることで、相乗効果が高まり、全体最適の価値創造の力を最大化できます」と遠藤氏は訴える。

 また、全体最適の価値創造には、KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)の設定とステークホルダーのコンセンサスを高めることも重要となる。目標がなければゴールも方向性も分からない。目標が定まってもコンセンサスがなければ多様な人・組織を動かすことはできないからだ。

 「KGI設定とコンセンサスはより高いレベルを目指すことが肝要です。KGI設定が低ければ、高い価値は生まれず、KGI設定が高くても、コンセンサスのレベルが低ければ、低い価値しか得られない。高いKGIとコンセンサスが、高い社会価値を創造するのです」と遠藤氏は述べる(図2)。

図2 KGI設定とコンセンサスの関係
図2 KGI設定とコンセンサスの関係
高度なICTがあっても低いコンセンサスであれば低い価値しか得られない。全体最適解を実現するには、高い目標(KGI)の設定と、社会からの高いコンセンサスを得る必要がある
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 社会課題の解決に向け、「長期ビジョンを描き、既存の枠組みを超えたスキームで全体最適の価値創造を起こしていくことが最も重要」と遠藤氏。そうして、より大きな社会価値が創造されることで、企業の成長機会もより拡大していくという。こうしたアプローチの可否が、企業が次世代を切り開く際の成否を分けそうだ。