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 日本各地の郷土色あふれる伝統野菜の人気が復活している。素朴でユニークな見た目や、力強い味が食欲をそそるのだという。専門通信販売やレストランも登場し、伝統野菜の出番が着実に広がっている。

 そうめんカボチャ、からとり芋、大浦ゴボウ、ハンダマ(水前寺菜)──。

旬の伝統野菜を毎月宅配

 有機農産物の販売を手がける「大地を守る会」(千葉市)の宅配用パンフレットを眺めると、思わず頬が緩むような、面白い名称や姿の伝統野菜が並んでいる。同社が登録会員に全国の伝統野菜を提供する、「とくたろうさん」という人気のサービスだ。料理研究家が関心を示し、口コミなどで広がり、今では全国から約2000人が登録している。 

 例えば、そうめんカボチャは、瓜のような楕円形で、濃い黄色をしたカボチャだ。熱湯でゆでて、お箸や手でほぐすと、そうめんのようにぽろぽろとほぐれてくることから名づけられた。

伝統野菜
「とくたろうさん」では伝統野菜の品目を5年前から3割増やした

 「伝統野菜は標準種と違って、野菜本来のアクも残っていますが、そこがまたおいしい。調理方法なども紹介して楽しんでもらっています」とは大地を守る会広報室長の大野由紀恵さん。伝統野菜は旬の時期や収穫量も限られるため、届くのは1カ月に2~3回で、それぞれ1~2個届く。注文しても、毎回届くわけではない。現在「とくたろうさん」で取り扱う伝統野菜は76品目で、単価は大体300円台程度だ。この春からは東京都世田谷区で伝統野菜を使った料理を提供するレストラン「ツチオーネ」も開店した。

 伝統野菜の代名詞、京都の京野菜や金沢の加賀野菜に続けと、取り組みが加速するのが、東京都内で取れる江戸野菜だ。

 江戸野菜は、江戸時代に諸国の大名が地元の野菜の種子を持ち込んだことで広まった。練馬大根、千住葱、滝野川ゴボウ、品川カブなど産地の名を取ったものが多い。だが、都市化や病気に強い種の品種改良が進むにつれ、次第に姿を消していった。

 復活に一役買ったのが築地市場の卸売会社、東京シティ青果(東京都中央区)だ。5年前から独自に江戸野菜の取り扱いを増やし、生産者や料亭に江戸野菜の魅力をアピールしてきた。同社の野田裕・営業推進事業部課長は「東京にこんなに新鮮でおいしい野菜があるのに、高い輸送費を払って、ほかの地域から野菜を仕入れるのはもったいない」と話す。

築地市場
築地市場では5年前から江戸野菜の復活に取り組む(写真:的野 弘路)

 東京・日本橋の料亭「日本橋ゆかり」や昨年、品川にオープンした居酒屋「江ど間」など、江戸野菜を看板にする飲食店も増えてきた。東京都の小金井市は市民団体と協力し、江戸野菜を使った飲食店などを増やし、町おこしにつなげている。

安全、安心志向も追い風

 伝統野菜の人気復活の背景には、野菜の種を守ろうという動きが出てきたこともある。現在は種苗会社から「F1」という交配種のタネを買って育てるのが主流で、自家採取した種を受け継いで育てる農家は稀だ。その点、伝統野菜は自家採取した種を大切に育て続ける農家が多い。「遺伝子組み換えの野菜などが日本でも作られるようになれば、日本独自の野菜は絶滅しかねない」(大地を守る会の大野さん)。

 不景気下の着実な伝統野菜ブームは、生活者の食の安全への意識の高まりも映しているようだ。