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 4日で34万円――。こんな高額ツアーが飛ぶように売れている。近畿日本ツーリスト(近ツー)などが発売する「皆既日食観測ツアー」だ。

 日食とは、月が太陽の前を横切り、光を遮って隠してしまう現象。今年7月22日の午前9時30分過ぎ、月と太陽がぴったり重なる皆既日食が、鹿児島県と沖縄県の間にあるトカラ列島や奄美大島などで観測できる。日本国内の陸地で見られるのは1963年以来とあって、注目の的となっている。

30分で完売のツアーも

 これを当て込んで、近ツーはトカラ列島と奄美大島、中国への4ツアー、計約65コースを企画した。

 価格は3~10日で7万5500~142万8000円。必ずしも安いとは言えない。しかし、早いものでは受け付け開始から30分で定員に。昨年11月、日食の半年以上も前に発売した「2009年トカラ皆既日食観測ツアー」では、定員1500人のところ総数2052人が殺到。抽選で、まずは815人を選んだ。

 全コース含めた定員は5000人だが、どのコースも既にほぼ満員となっている。申込者は、30~40代の男性が6割、女性が4割。キャンセルは随時出るため、まだ受け付けはしているが、「空きが出るそばから埋まっていく状態」(近ツーブランド戦略室)と言う。

 人気を受け、意外なものにもビジネスチャンスが巡ってきた。その1つが、水を使わない簡易トイレだ。

 観光客の訪島が多く予想されるトカラ列島には今回、日本セイフティー(東京都文京区)が簡易トイレ「ラップポン・トレッカー」(18万円)を約40台、無償で提供する。洋式便器の代わりに、専用の凝固剤を入れた特殊フィルムを敷き、スイッチ1つで排泄物を自動的に包み、可燃ごみとして廃棄できる。

簡易トイレとメガネ
水が使えない離島の観測地では簡易トイレが重宝される(左)。安価な日食観望用メガネも人気(上)

 「トカラ列島は、住民の飲み水が足りなくなるほどライフラインが限られている。水洗トイレを増設すると、村の負担が大きくなり過ぎる」(同社)ため、水なしトイレが活躍するという。

 ラップポンは2005年、もともと介護施設向けに開発したもの。同社は今後、建設・レジャー業界などへ販路を広げたい考えで、今回の無償提供で認知度アップと需要開拓を狙う。

日食観測グッズは前年比30倍

 日食観測用グッズの売れ行きも好調だ。天文機器などの販売を行うマゼラン(京都市)では、日食を見るためのメガネ(1枚294円)や、太陽を見るために普通の望遠鏡にかぶせる「金属メッキガラスフィルター」(1万4800~約5万円)が前年比20~30倍売れている。ツアー参加者だけでなく、教育機関などからの需要もある。

 これらは通常、月に1個売れるかどうかという商品。ここまで引きが強いのは、皆既日食が見られない本土でも部分日食なら見られるからだ。九州や沖縄なら約9割、東京でも7割以上、月が太陽を隠す様子が観察できる。

 今年は「世界天文年」でもある。ガリレオが望遠鏡の原型を作り、宇宙を観測した1609年から400年目に当たる。これを記念して、世界中で天文学や科学に関する行事が目白押し。星に商機を託す“日食ビジネス”はまだまだ盛り上がりそうだ。