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氷出し茶ポット
ハリオグラスの「氷出し茶ポット」。(写真:スタジオキャスパー 以下同)
解けた氷水が茶葉を潤している
木製のカバーを外せば、解けた氷水が茶葉を潤している様子が分かる

 まず茶葉を5g。次いで氷を入れる。容器いっぱいに入れ、氷の重量は300g弱。あとは氷が解けるのを静かに待つ。気温にもよるが、6~8時間ほど経てば、氷はすっかり解けてなくなっているはずだ。その代わりに、下の容器は透き通った緑色の液体――お茶で満たされている。

 ハリオグラス(東京都中央区)が製造・販売する「氷出し茶ポット」(5250円)は、文字通り、解けた氷水でお茶を淹れるための道具だ。上部の容器の底には細い切れ目が入れられており、微量ずつ水が落ちる仕組み。解けた氷水が茶葉を濡らし、茶葉からうまみ成分を奪って少しずつ下の容器にたまっていく。

 飲んでみると、驚く。もちろんお茶には違いない。しかし、渋みがまるでなく、口当たりは柔らかでほのかな甘みと濃厚なうまみを感じる。スーパーで売られている日常用の茶葉で淹れたにもかかわらず、上等な玉露を冷やして飲んでいるかのようだ。

低温で甘み引き出す

 秘密は、低温抽出にある。お茶の渋みの原因となるタンニンやカフェインは、高温であればあるほど溶け出しやすい。一方で、玉露など高級茶葉に多く含まれるうまみや甘みの成分テアニンは、低温の方が抽出しやすい。玉露を低温で淹れる理由はそれだ。

 つまり、甘みやうまみを覆い隠してしまう渋み成分の抽出を抑え、加えてうまみ成分もより多く引き出すことで、日常用の茶葉でも上等なお茶に近い味で淹れられる、というわけだ。

 デメリットもある。最大の弱点は時間がかかること。高温のお湯を使えば数分間で抽出できるものが、低温であればあるほど時間がかかる。この商品も、6~8時間待ってようやく淹れられるのが280ミリリットル。小さな缶コーヒー1本分程度の量に過ぎない。

 ハリオグラスは2004年、氷ではなく「水出し」の茶ポットの販売を開始した。以降、じわじわとお茶を低温抽出するメリットが認知されるようになり、数種類を販売する水出しポットは累計出荷数100万個を超えるヒット商品になった。氷出し茶ポットは2009年6月から専門店や総合スーパーの店頭に並び、好調な出足を見せている。

 サントリーは2009年9月末までの期間限定でインターネット上に「伊右衛門サロンオンラインショップ」を開設。氷出しの茶ポットとグラス、石臼でひいて抹茶にする前の碾茶をセットにした「氷出し碾茶器セット」(7200円)を販売している。

お金かけずに贅沢気分

 同社が京都市内で運営するカフェラウンジ「IYEMON SALON KYOTO」で1杯900円で提供し、人気が高い「氷出し碾茶」を自宅でも楽しめるようにと開発したものだ。

 水出しのコーヒーは、以前から一部の喫茶店などで提供されていたが、家庭用向けの機器も増え始めている。ハリオグラスの「水出し珈琲ポットミニ」は1人用で1260円。岩城ハウスウエア(千葉県船橋市)が販売する「ウォータードリップコーヒーサーバー」は2100円だ。

 渋みや苦みを抑える水や氷による低温抽出。時間はかかるが、手間はほとんどかからない。茶葉やコーヒー豆などにお金をかけずとも、驚くほどにおいしく飲める。その点、経済的でもある。ハリオグラス広報は「職場に水筒を持っていく方などにも好評」と言う。

 6~8時間かけてたった280ミリリットルを抽出するという「贅沢なこだわり」が、お金も手間もかけずに実現できる喜び。低温抽出ブームの背景にあるのは、消費者のそんな心理なのだろう。