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 おそらく大手全国紙としては初めての取り組みでしょう。産経新聞が毎週木曜日に「Web面」を新設し、Webに限定した記事を毎週定例的に掲載していくことになりました。その第1弾である7月30日付のトップ記事は、「ツイッター、政治家にも“新兵器”~140字の『つぶやき』席巻」。誰でも気軽に参加できるミニブログ的なソーシャルメディアとして世界で流行するツイッターの台頭ぶりを解説していました。

 今週もう一つ目に留まったのは、7月28日付日本経済新聞朝刊の社会面に掲載された「将棋王座戦、山崎7段が挑戦者に」という将棋の記事。これは明らかに、梅田望夫氏の名著「シリコンバレーから将棋を観る」(中央公論新社)を読んだばかりだったので、その余韻で関心が高まっていたのです。

 同一タイトルの連覇記録を17で更新中の羽生善治王座(名人、棋聖、王座、王将の現在4冠)に挑戦する相手が山崎7段に決まったというニュースです。この羽生名人こそは、将棋界で知のオープン化による一種の革命を進めてきた先駆者で、梅田氏は著書の中でその社会的な意義を取り上げ、対談もしています。

 新聞や雑誌などメディアの将来がどうなるかは、「知のオープン化」で先輩格である将棋の世界が暗示しているのではないか――。梅田氏の著書を読み、改めてネットメディアの新聞記事を見ていて、そんな思いが強くなりました。

勝つことと真理探求の両立

 将棋の世界も以前は「ムラ社会」で、歴史的に先輩棋士らが築いてきた「常識」や「作法」といったものが暗黙のルールとなっていました。しかし、羽生名人を筆頭とする「羽生世代」の棋士らによる「将棋をさらに進歩させよう」という使命にも似た取り組みに加え、インターネットの発達によって過去の膨大な棋譜や最新の棋譜が誰でも簡単に入手できる体制が整ったことで、ムラ社会は一気に崩れ、将棋の中身も、それを取り巻くプロ棋士ら、さらには将棋界全体も革命的に変わったのです。

 ここで梅田氏が指摘するのは、羽生世代は将棋で勝つことに全力を投入する「勝負師」と、将棋の真理を探究し続ける「将棋師」を両立させてきたということでした。例えば、ある戦法で独自の秘策があったとしてもそれを隠すことなく、オープン化した知の大海に放り込んで真理の探究作業に貢献しつつ、そのうえで勝負に勝ってきたという格好です。とりわけ羽生名人は、こういった秘策をタイトル戦の大舞台であえて実験的に披露しながら、7冠王など前人未到の記録を作ってきました。