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 「ちょっと違う感じになってきったなぁ…」。ちょうど1年近く前、日経ビジネスの編集部で、ある企画について議論をしていた時、企画チームの頭に中に嫌な予感がよぎっていました。その企画の仮タイトルは、「インフレに負けない経営」。そうです。この少し前ぐらいまでは、原油から金属、穀物、食糧など幅広いモノの値段が急騰していて、「企業経営はこの資源インフレに耐えられるのだろうか」といった論議があり、この企画を考えていたのでした。

 ところが、米国のサブプライムローン問題の影響が広がってきて、既に原油や金属の価格はピークアウトしていたのです。それでも企画チームでは「まぁ、中期的には資源の価格はまた上がってくるだろうから、とりあえずもう少し様子を見るか」と話していました。しかし、9月半ばの「リーマン・ショック」に至り、「もうインフレは無理」と覚悟。その後、恐慌の足音すら聞こえてきそうな不況へと突き進んでいったので、結局は「恐慌突破」というタイトルに切り替えたのでした。「恐慌のような未曾有の逆風にも負けない経営とはどんなことか」という視点で捉えることにしたのです。

「原油200ドル」の旗は下ろさず

 ただ、「恐慌突破」という視点で企画チームが引き続き取材を進めていたところ、取材先の多くは依然として、「いずれまたそのうち資源インフレになるだろう」という認識を示していました。

 クラレの伊藤文夫社長は2008年の初めに、「原油200ドル時代に備えよ」と社内に檄を飛ばしました。確かに原油価格は一時、150ドルに迫るほど高騰しまたが、10月末には60台まで急落していました。それでも、伊藤社長は「中期経営計画でも、原油200ドルという想定を変えるつもりはない」ときっぱり。これは一義的には「景気など外部環境に翻弄されず、自らの武器を磨き続ける」という意味合いでしたが、「原油価格もいずれまた上がる」という思いも秘めていたようでした。さわかみ投信社長の澤上篤人社長はズバリ、「インフレは必ず再来するから、長期的な視点で先回りして投資するなら、むしろ絶好の機会だ」と言っていました。

 世界の人口はますます増加し、特に新興諸国での需要が爆発的に拡大するから、資源が足りなくなるのは自明の理。そもそも人間というものはいったん豊かな生活を知ってしまったら、二度と元には戻れないという大きな流れがある、といったことが理由でした。ただ、不況がかなり深刻化したため、今春ぐらいまでは「再び資源高になるのは、しばらく先ではないか」という見方が一般的には多かったと思います。