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 これに対して、多くの日本企業からは「本業の儲けに直接関係ない資産の評価までひと括りにされるのはおかしい」と反発する声が上がりました。日本企業は売上高や期間損益を重視し、利益を内部留保として資本に蓄えていく発想だったからでしょう。しかし、IFRSでは本業に直接関係ない資産でもすべて評価の変動を織り込み、企業の全体像を丸ごと見られるようにする発想なのです。

 日本企業の多くがIFRSの強制適用に戦々恐々としているようですが、会社の資産について従来以上に目配りし、その価値に敏感になることは決して悪いことではないでしょう。この連載の第1回目で、「会社はモノ(株式)の部分とヒト(会社の資産)の部分を併せ持つ2階建て構造である」ということを書きました。東京大学の岩井克人教授が以前から唱えてきた考え方です。

 株主至上主義はモノの部分を重視しすぎて会社を捉えてきたため、結果としてマネーゲームを生み、会社や事業の実態とかい離したレベルで巨額の資金が動くことになって自壊しました。その反省からは当然、ヒト(法人)として会社を捉えることを重視する必要がありますが、それは工場や保有株式なども含めた会社の資産全般のあり方について、従来以上に真剣に考えるということです。

 決算で純利益の数字が悪くなりそうだから、持ち合いしている株式を少し売却して益出ししよう――。IFRSが適用されると、「含み益」を利用するこんな小手先の会計処理も通用しなくなりますから、必然的に、持ち合い株式や遊休不動産の意味合いを改めて考えざるを得なくなるはずです。そして、それを真剣に考え、意味が薄い保有資産の変動による影響を受けにくい会社がIFRSに強い会社であり、会社のヒトとしての部分を重視している会社とも言えるのでしょう。