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 技術専門媒体の記者は,地方の工場に取材に行くことが多くある。そのほとんどの場合,最寄の駅まで電車で行き,タクシーで工場に向かう。その車中で,私はすることがある。
「あそこの社員って,何か偉そうですよね」
「口の利き方がなってないですよね」
これから向かう会社のちょっとした悪口を,タクシーの運転手さんにしてみるのだ。特に初めて訪問する会社の場合は,忘れずにする。

 「そうなんですよ。いや,この前乗せたそこの社員のお客さんがひどくてさ~」などと運転手さんがのってきた場合は,その後の取材を緊張してすることになる。「そんなことないですよ。皆さん,いい方ですよ」と否定してくれた場合は,リラックスして取材に臨める。

 人と人の関係は,どんな立場であれ対等であるべきだと思っている。上司と部下,夫と妻,親と子供。お互いに尊重できるからこそ,良好な関係が生まれる。上の立場だからといって,一方的に意見を押し付けたり,力で抑えつけようとすれば,相手は身構えるし,本当のことは何も話さないようになる。生まれるものも少ないはずだ。

 その人がどのような人なのか? よく分かるのが,タクシーなどのサービス業を営む人と接するときだ。サービスの対価としてお金をもらうのだから,そこに上下の関係は生まれないはずなのだが,ともするとお金を払う側が偉いと思う人がいる。口調が乱暴になったり,不愉快な態度をとったりしても,お金を払う“偉い”立場だと許されると勘違いをする。

 もしタクシーの運転手さんが不愉快になるような社員が多い会社は,部下に対しても同じように接している可能性が高い。不幸なことにそれは会社の文化であることが多く,そのような環境にいれば,それが当たり前となって引き継がれる。新入社員で入社すれば,他の職場に勤めたことがないのだから,会社とはそういうものだ,と思わざるを得ない。下の意見が通りにくい会社なわけだ。

 私の経験から言うと,タクシーの運転手さんとの話は,あまり外れることがない。運転手さんが社員を褒めた会社との取材では,非常に話が盛り上がる。対応してくれる方と良好な関係が生まれ,いい記事を一緒に作り出していこうという気になる。一方,運転手さんが社員の悪口を言う会社との取材では,どこか話が盛り上がらない。

 だから,自分が入社したいという会社が絞れたら,第三者の立場の人たちに,いろいろと話を聞くのがよい。タクシーの運転手さんをはじめ交番の警官,コンビニエンスストアの店員など。近所の居酒屋などでバイトをするのが一番のお勧めだろうか。お客と店員という立場で,実際の社員と触れ合うことができるのだから,自分が入社を目指すべきかどうかが,1週間も働けばきっと判断できるはずだ。