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 パンはパンでも蒸しパンだけを販売する専門店「ミスタームシパン」が店舗数を増やしている。2009年から多店舗展開を始め、現在、全国に64店舗を構えるまでに拡大した。

 店に足を踏み入れると、商品の種類の多さに驚く。人気を集めるのはお菓子タイプの商品だ。オレンジの皮のシロップ煮をトッピングし、中にはビターなチョコレートを入れた「オレンジチョコ」。抹茶を練り込んだ生地の中に栗あんを入れた「抹茶栗あん」など、色とりどりの商品が並んでいる。

 甘味だけではない。中にたっぷりのマヨネーズを入れ、ロースハムとコーンをトッピングし、ドライパセリを散らした「ハムマヨコーン」など、食事向けの商品も人気が高い。価格はいずれも140円前後だ。

家庭に蒸し器が普及しつつあるのも追い風。自宅で蒸し直して食べる客も多い

1号店は下町の商店街に

 1号店は、大阪市阿倍野区・あべの王子商店街に2005年に開業した。

 店主の渡辺祐介さんは、およそ20平方メートルの店を家賃6万円で借り、蒸しパン専門店「ムッシュムシパン」を始めた。店舗の2階部分に住み込み、製造から接客まで1人でこなした。

 立地は、決して良好と言える場所ではなかった。いわゆる「シャッター通り商店街」だ。にもかかわらずこの1号店は、開店1年後には月商300万円を売り上げるまでに人気を集めた。

 蒸しパンの製法に人気の秘密がある。ミスタームシパンの蒸しパンの生地は、市販されている一般の蒸しパンとは異なり、生地に鶏卵やバターなどの油脂、乳製品を使っていない。

 昔、よく食べられていた「ふかしパン」の食味に近い。シンプルな味わいだけに、飽きが来にくい。

 加えて、シンプルな味わいの生地は具材に合わせやすいという利点もある。様々な食材と組み合わせてレパートリーを増やすことで、「蒸しパンにはこんな食べ方もあるんだ」という驚きを与えられる。来店するたびに新しい商品を提供することで、顧客が再来店する動機を生み出せる。

 また、油脂分を含まないので摂取カロリーが低い。卵や乳製品を使わないため、食物アレルギーを持つ子供にも食べさせられる。蒸しパンは、健康志向にも応えられる、というわけだ。

 1号店の生みの親である渡辺氏が「暖簾分け」するという形で、全国に店舗を拡大している。

 フランチャイズチェーンの仕組みに近いが、加盟店は売り上げ比例のロイヤルティーではなく、売り上げの多寡に関わらない固定のライセンス料を支払う。それによって、本店から商標の使用権や蒸しパンのレシピ、調達のノウハウなどを提供してもらう。

 店舗では、冷凍生地を解凍し、発酵させ、具材を入れて後は蒸すだけ。「数日の研修で店を出せる」(渡辺氏)。開業資金およそ1000万円と、菓子店やパン店と比べて初期投資も小さい。スピード出店が可能な業態と言える。

 健康志向に応えた蒸しパンという商品の魅力と、低コスト出店による機動性。この両輪が、ミスタームシパンの快進撃を支えている。