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口数が極端に少ないその瞳が訴える不安と意思の強さ

 Tさんが初めて就職相談に来た日、聞くことができたのは、友達の背中に隠れながらようやく発した「・・うん」という、かぼそい声だけでした。それでもTさんは、毎週欠かさずに、向日葵さんが滞在している教室にやってきました。友人に付き添ってきただけという素振りで声一つ発せずに帰っていくこともありますし、自己分析をしてみようか「・・うん」という日もありました。ようやく「話」を聞くことができたのは2カ月ほど経ったある日、一人で一番に教室に入ってきた時のことでした。

 「・・・なにがしたいか分からない・・何に向いているか分からない・・学びを生かす仕事に就きたいけど、自信がない・・・人と話すのも怖い・・就職活動、怖い・・・でも・・・私ひとりじゃ絶対就活できないと思うし・・でも、何もしないと、就職できないし、就職できなかったら親に迷惑かけちゃうし・・だから・・・」

 人見知りで、声も小さくて、人と目も合わせられず、極端に口数が少ないTさんが、それこそ30分以上かけてようやく吐き出した言葉でした。しかし、その目に涙はなく、就職活動への怖さと同じくらいの、「就職したい」という強い意思を秘めていました。

就職活動の二つの方法

 就職活動には二つの方法があります。自分がやりたい会社を選び応募する方法と、この学生と働きたいと思ってくれる企業と出会うまで応募し続ける方法です。前者が理想とされていますが、実際「やりたいこと」が見つかっている学生はほとんどいません。英語が話せないのにキャビンアテンダントになりたいとか、企画がやりたいという印籠を振りかざすとか、「やりたいこと」が一人歩きしていることも少なくありません。

 「何がしたいのか分からない、自分に自信がない」というTさんの就職活動は、企業を受験しながら自分の自信を見つける作業となりました。「分からない、怖い」と立ち止まっていたら、企業の応募締め切りはあっという間に過ぎてしまいますから、「何に向いているか分からないのなら、幅広い業種職種を受けてみよう」という戦略です。

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 Tさんの受験した企業を、縦軸に学びを生かす、横軸に経験を生かす、にマッピングすると図のようになります。学びを生かせる業界(赤)、経験を生かせる業界(青)、地元でも可能性を模索した企業(緑)、数字は受験企業数を表します。エントリーシートを提出した企業はメーカー、百貨店・ストア・専門店を中心に、エネルギーを除く全業種、65社に及びました。受験していく中で、自分の気持ちを考え、書類選考や筆記試験の結果を踏まえて“身の丈”を学んでいきました。

 「こんなんでいいのかしら」とTさんが立ち止まったのは「企業選びの軸」という言葉が立ちはだかった時でした。