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料理の専門学校を反対され、
国公立大学を選んでしまった学生の未練

 就職塾向日葵のキャリアガイダンスの中で、「この学び(学校)を選んだ理由を書きなさい」という自分のキャリア形成の基点となる質問項目があります。大学を選ぶ理由は、専攻、資格、就職率など人それぞれです。特に国公立大学の場合は、学費や家から通えるなど、経済的・地理的なもの、またはセンター試験の結果、という学力的な制約による決断をすることも少なくありません。中1ギャップならぬ“大1ギャップ”が表面化してきている現場としては、大学受験の未練から早く立ち直らせ、大学での学びや生活の充実に目を向けさせたいという意図があります。

 大学1年の4月のキャリアガイダンスが終わるやいなや、今、書いたばかりの「この学びを選んだ理由」の回答を全部消し、そのプリントを持ってツカツカとNさんがやってきました。

 「私、料理研究家になりたくて、本当は料理の専門学校に行きたかったのに、親に反対されて、この(国公立)大学に来てしまいました。そう書いていいのですか。」

 といいます。その眼には自分の夢に反対した親への恨みにも似た感情と、新しい環境にも馴染めていないもどかしさが混じり、まさに「わしは、こんなところ、来とうはなかった!」の名セリフの表情です。

 進路選択が迫った高校生が考える自分の人生観が、社会経験をしている大人の人生観に押し切られてしまったのでしょう。親にしてみれば、せっかく国立大学にいける学力と、それに投資できる経済力があるのになぜ専門学校?という思いもあったでしょうし、おいまわしと呼ばれる雑用係や、丁稚奉公のような厳しい料理人の世界を知っている親は、納得できなかったのでしょう。しかし、親が半ば強引に進路を決めてしまったとはいえ、本人もここに来ているという事実もあります。料理への思いを昇華させなければ、目の前の大学生活に本腰が入らないというNさんからのSOSなのです。

料理研究家という錯覚

 そうかぁ、料理が好きなんだ、得意料理は何?と聞いてみます。

 「そうですねぇ、これが得意っていうものは特になくて、冷蔵庫にあるもので結構簡単につくっちゃいます」

 あぁ、そう。じゃあ、包丁も自分でちゃんと研ぐとか、食材とかこだわっていることとかあるんだ?

 「いえ、別に。」

 え?嫌な予感がして、もう一つ質問します。そもそも、どうして料理をしたいの?

 「あの、私がなりたいのは、料理をする人じゃなくて、料理研究家です」