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就職講座に遅刻する理由

 2日連続で仕上げる大学の就職準備特別講座は朝9時から夕方18時までびっちり行います。参加申し込みをしているにもかかわらず、1人だけ、時間になっても来ません。午前中の自己分析から履歴書を書く作業が終わり、昼休みが明けた頃、ようやくその学生がやってきました。

 「遅れてすみません、今から参加してもいいですか」

 ブランド物のストライプスーツに、流行りのフレアブラウス、履きなれたパンプス、目パッチリに見える化粧に身を包んだYさんは、スーツ量販店のシンプルなリクルートスーツの学生ばかりの教室で、目立っていました。他の学生は、理由も聞かず、特段の不快感を示すことなく淡々としていて、遅れて登場するYさんに慣れているかのようです。

 こちらは大変です。急遽、別メニューを用意して対応しなければなりません。遅れた理由は後で聞くことにして、3時間も遅れてしまったYさんのために、他の学生指導と並行して、Yさんの自己分析の手順を教えていきます。履歴書の「学生時代に一番頑張ったこと」の欄には何を書くか、というところまで来た時、Yさんが自信ありげに言いました。

 「私、アルバイトをすっごく頑張ったんです。」

 何のアルバイト?

 「え? 何のアルバイトか書かなくちゃいけないんですか。
 でも、私、本当、すっごい頑張って、お店で一番の売上あげたんです。すごくないですか。」

 会話慣れした早い切り替えし、少し語尾がのびて上がるイントネーションに、向日葵さんのアンテナがピクピク反応し、嫌な予感がします。

 うーん。“飲食店のアルバイト”とでも書く?
 “飲食店で一番になった”って言ったら、なんだかまるでキャバクラ嬢みたいに聞こえちゃうじゃない。

 「・・・・」

 的中。どうやら、今日の遅刻の原因はここにありそうです。

アルバイトホッピングに潜む危険

 学生時代に頑張ったことは、サークルのことを書くことに決めたため、講座の間、腑に落ちない表情をしていたYさんが、みんなが帰るのを見計らうようにやってきました。