PR

車の絵が上手ければカーデザイナーになれるはず

 Aさんは、車が大好きな学生です。暇さえあれば、車の絵ばかり書いています。カーデザイナーになることを夢見て美術系大学への進学を志したのですが、受験の結果、合格できたのは工業デザインのコースでなく、基礎デザイン系のコースでした。それでもAさんは、車の絵ばかり、授業中でも何でも、もくもくと書いていました。車が上手に書ければ、カーデザイナーになれるはずだと信じていました。

 デザイン実習の応募締め切りの直前に、車の絵ばっかりポートフォリオを持って、「カーデザイナーになれますか」と、Aさんはやってきました。

「車の外形だけでなく、フロント、ミラー、ライト、インパネまで、とってもきれいに書いてあるけど、この車のコンセプトは? 何を提案したいの?」

と聞くと、ムスッと黙り込んでしまいました。渾身の作品にケチつけられてプライドが傷ついた、というところでしょうか。ただ世の中にあるものに、ちょっと形や色みを変えるだけでは、デザインとは言いません。現状あるものの問題点を定義して、「だからこうあるべき」という提案がなければ、それは写し絵に過ぎません。カーデザインは模写ではありません。機能美でなければならないのです。

カーデザインの何がやりたいか

[画像のクリックで拡大表示]

 右の図は、デザイナーの実質的な採用選考会ともいうべきデザイン実習で、募集されたデザイナーの種類を、業界ごとに表したものです。企業によって表記の違いこそありますが、大学の学科区分とは異なっていることに気づきます。つまり、学科やコースでの線引きとは関係ないため、基礎デザイン系のコースに所属しているAさんでも応募することは可能だということです。

 しかし、特筆すべきは、その細分化、専門化されたデザイナーの職種です。インテリア、カラー、テキスタイルなどパーツごとのスペシャリストとして募集されており、「カーデザイナー」という職種での募集はされていません。

 就職塾向日葵が指導した中でも、絶対色感を持つ学生や、巨大で緻密な馬の彫刻を彫り上げた学生、今にも湯気がたちのぼりそうなてんぷらそばをレンダリングで書き上げた学生などが、デザイン実習に呼ばれています。さらに、デザイン実習に呼ばれたら、2日~5日という短期間で、テーマを与えられ、コンセプトから商品提案を考え、アイデアスケッチ、モデル制作、プレゼンテーションまで行わなくてはなりません。

 絵が書けないとデザイナーになれませんが、絵が書けるだけでもデザイナーにはなれないのです。

不合格通知がもたらした変化

 結局、ポートフォリオを根本的に直す時間はなく、そのまま出さざるを得なかったAさんは、どこのデザイン実習に応募しても書類通過すらしませんでした。

「僕に足りないのは何ですか」。