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 Aさんがやってきたのは、デザイン実習の不合格通知から2週間ほどたった頃のことでした。Aさんは、デザインの過程において、「情報収集やコンセプト立案に時間がかかり困っていたこと」、「時間がかかる過程はいつも適当にやってしまって、絵の技法にばかり固執していたこと」を反省しました。そして、自分がデザイナーを目指すために、「あとどんな知識や技術が身に付けばよいのか、を教えてほしい」と、やってきたのです。

 不合格を受け入れたAさんは、自分に何が足りなかったのかを知りたいという気持ちに変わっていました。これはAさんにとって、大きな成長でした。車を溺愛する偏屈なデザイナーの卵ではなく、市場マーケティングする向学心にあふれた学生になっていました。

 就職活動で差が出るのは、不合格通知をもらったときです。竹は節目で伸びるというように、就活生も同じです。「どうせダメだろうと思ったよ」と自己卑下してもいけないし、「別に本命じゃなかったんだ」と負け惜しみをしても成長はありません。

・何が足りなかったのだろう
・どうすれば改善できるのだろう

と考えて、分からなかったら恥をかきすてるつもりで周りの大人に聞いて、初めてその壁を乗り越えることができます。「なぜ」「どうしたら」「考える」「教えを乞う」は、社会人としても求められる力です。社会人になって出合うであろう壁を「乗り越える力」を身につけさせるために、就職活動は存在するのだと、私は思うのです。

カーデザイナーの夢破れたAさんの代替の戦略

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 Aさんは、マーケティングを学ぶために、大学院に進学することを決心しました。自分の描く絵を、ただの模写から、商品提案に変革するために必要なもの、と考えて出した答えでした。

 Aさんの決断した進学には、明確な目的がありました。現在の知識では不安だから、何かしらの知識を足して市場に出よう、というものではありません。就職活動で知った市場のニーズから、自分が現在持っている知識を引いて、不足しているマーケティング知識を身につけたいという明確な目的とゴールを見据えていました。デザイン実習という就職活動を通して、Aさんは今まで意識すらしなかった「市場」を見ることが出来たのです。

 今思うと、市場と自分を見比べて「差異は何か」と考えたところから、Aさんのマーケティングはもう始まっていたのかもしれません。2年後、大学院を修了したAさんは、よりマーケティング情報がダイレクトに感じられる情報機器メーカーのデザイナーとして採用されました。

(コラムで提示している学生の事例は、就職塾向日葵が指導したものであり、処方は、個人の状況などによって異なり、すべての人に当てはまるとは限りません)