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 エンジンは直列4気筒の1.3Lと1.5Lで、1.5Lには4輪駆動仕様がラインアップされる。変速機はCVTで、1.5LエンジンのFF車には7速のマニュアルモードが付く。また、1.5Lの4輪駆動仕様には通常のトルクコンバータ付き4速自動変速機が組み合わせられる。FF車の1.3Lエンジンと1.5Lエンジンのラクティスは、どちらもよく走るものの、発進の際にやや力不足を感じる点も共通している。


図2◎1.5L車のエンジンルーム。

 トヨタのエンジンはここ数年、多くが高回転・高出力指向である。たとえば、セルシオやクラウンといった高級車のエンジンもその方向性にあり、発進時のゆとりある優雅さは少ない。一方で、フルスロットルにして最高回転数まで回したときには胸のすく感触を味合わせてくれる。

 同じことがラクティスのようなコンパクトカーのエンジンにも言えて、最大トルクには4000rpm以上で到達し、性能曲線を見れば3000rpm付近にトルクの谷間がある。欧州車のエンジンはフラットトルクが常識で、2500~4000rpmあたりのトルクを高い数値で安定させている。したがって欧州車は、コンパクトカーから高級車に至るまで、発進に勢いがあるし、低速域での走りに余裕がある。そして、日常よく使う範囲の回転数で、アクセル操作に対し自在にスピードを調整できるようになっているのだ。

 ラクティスも、一旦スピードに乗れば、ユーティリティを売り物とするコンパクトカーとは思えぬ速さを見せるものの、発進でもたつくのが気になる。また、1.3Lエンジンでは、回転を高く保たないとトルク不足となるため、CVTが常にエンジン回転を高く維持するので、エンジン騒音が耳障りだ。

 4輪駆動仕様はトルクコン付きの4速自動変速機と紹介したが、車両重量でFFにくらべ60kgの負担を強いられていながらも、ギアの力で減速してしっかり加速させるので、エンジンの唸り音はもっとも穏やかである。音質も低音域で、耳にうっとうしくない。CVTでは、金属ベルト音も騒音に加わりやすく、神経質な高周波騒音が出る。

 こうしたエンジン騒音が、クルマとして実にもったいない。それ以外、たとえばすでにヴィッツでも実証済みの電動パワーステアリングの感触は素晴らしく、現存の電動パワーステアリング車のなかでもっとも優れた仕上がりではないかと思う。また、先のエグゼクティブチーフエンジニアが、欧州仕様のカローラを開発した経験からこだわったという前席のできもよく、体をよく支え、また腰痛を起こさせないクッションの硬さとシート形状を作り込んでいる。

 ただし、後席については、開発テーマにある大人4人が…という狙いには不向きな、サイズの小ささが残念だ。とても大人が腰を落ち着けて座っていられる大きさにない。後席は、大人にとっては短距離移動用であるか、または子供サイズということになるだろう。

 ヴィッツでは従来型から継承されたセンターメータが、ラクティスでは継承されなかったものの、ステアリングの上から見通すパノラマビューメータによって、前方の視線移動量だけでなく、左右の視線移動量も抑えている。それでいて、ステアリングの高さを含め、ドライビングポジションは正しくとることができる。

 1.5Lエンジン車に設定された7速のマニュアルモードを持つCVTは、ステアリング裏のパドルでシフト操作できるが、そのパドルの配置と、パドルの手触りが、実にドライバーの心をくすぐる仕上がりで、また1~4速間の、仮想ギアのギア比の設定が絶妙であり、フルスロットルでの加速がレーシングカーのように快い。エグゼクティブチーフエンジニアの言葉通り、運転を楽しませるコンパクトカーに仕上がっている。

 低速トルクやエンジン騒音など残念な部分はあるものの、シートアレンジの簡素化、操縦安定性を優先したサスペンション設定、ドライバーの目線の動きを最小限にとどめるメータ配置、レーシングな遊び心を満喫させるパドルシフトなど、ラクティスは、欧州志向のクルマ好きを満足させるコンパクトカーといえるだろう。


図3◎インパネ(写真はパドルシフトを採用していないタイプ)