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 「2007年,航空機への液体燃料の持ち込み規制が緩和され,携帯電話機や携帯型オーディオ機器に向けた出力数百mW~1W程度の小型燃料電池が発売される。2008年ころから量産が始まり,市場が立ち上がってくる」---。日経エレクトロニクスが主催したWPCフォーラム2005「携帯電子機器用小型燃料電池」(2005年10月26日,東京ビッグサイト)」での講演と議論によると,実用化ロードマップはおおよそこのようになる。

 なぜこうしたシナリオになるのかをもう少し詳しく説明したい。まず需要面で,長持ちする電池への要請が思ったより強い。携帯電話機に地上デジタル・テレビ受信機能などが次々と追加されて消費電力が上がっているからだ。技術面では,ポンプやブロワーといった補機を使わないパッシブ型燃料電池の完成度が上がってきた。それを支えたのが「メタノール・クロスオーバー」を低減する電解質膜と出力を向上できる触媒材料の高性能化である。後は「空気を吸って水を出す」という燃料電池の特性と,「液体燃料カートリッジを買って燃料を注入する」という使い方を社会が受容するかどうかだ。

 燃料電池の社会に対するインパクトがどの程度あるかを考えるとき,携帯機器という民生分野の市場が立ち上がる意味は極めて大きい。確かに燃料電池自動車は,2002年12月からリース販売が始まっているが,市場が立ち上がったとはいえない。コストと性能面でまだ技術的な課題が多く,なにより需要面でいまひとつインパクトが弱い。確かに,環境に優しいというのは大切なことだが,消費者をひきつけるワクワク感といったものがもっとほしい。

「いつでもどこでも切れ目なく」

 その点,パソコンや携帯電話機では,現在主流のLiイオン2次電池が長持ちしない,という不満が大きい。メタノールやボロハイドライドなどの液体燃料をカートリッジで瞬時に注入できれば「いつでもどこでも切れ目なく」携帯機器が使えることになり,市場拡大が期待できる。


2000年1月に米Motorola社が発表した,携帯電話機とメタノール入りのカートリッジのモックアップ

 カートリッジによって液体燃料を注入する方式が注目を集めたのは2000年の1月のことだった。米Motorola社が,携帯電話機とメタノール入りのカートリッジの写真を発表したのだ(写真1)。同社は同時にパッシブ型のDMFC(ダイレクト・メタノール型燃料電池)を開発中であることを明らかにした。この写真は単なるモックアップだったが,パッシブ型燃料電池の可能性を分かりやすく世間に示したのである。

 燃料電池をウオッチしていた筆者は,この写真に大いに興味を持ち,さっそく米国のパッシブ型の小型燃料電池の開発状況について調べてみた。すると,ある共通点があることに気づいた。当時,Motorola社,米Manhattan Scientifics社,Enable社,といったベンチャーが開発していたパッシブ型燃料電池の技術の出所が,すべて核兵器研究で有名な米国ロスアラモス国立研究所だったのである。広島,長崎の原爆が開発されたところだ。

軍縮・リストラで燃料電池ベンチャーを輩出