日経エレクトロニクス誌は最新号の2006年4月10日号で,35周年を記念して「電機メーカーの挑戦(前編)いまこそ世界へ---狙うは新興市場の30億人」という特集を組んでいる。詳細は本特集をぜひお読み頂ければと思うが,筆者がこの特集を読んで最も面白いと思った視点が,製品を構成する要素について「共通化のさじ加減」を見極めることが重要だとする下りである(同誌p.89参照)。

 本特集では,エレクトロニクスメーカーは今後世界人口65億人の6割を占めるBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)諸国の市場を制して利益を上げ,新製品開発の原資を得るべきだとする。そのために重要なのは「世界同時発売」と「多品種大量生産」であり,さらにこれらを実現するために不可欠なのが製品の構成要素の共通化を進めてコストダウンを達成することだと説く。

 しかしこの共通化は,やみくもに進めればよいものではない。例えば,ハイエンド機種向けのLSIを基準に共通化を進めると,ローエンド機種にはオーバースペックになり,かえってコストアップを招く。製品の種類や機種数,さらにはリード・タイムなどを総合的に考慮して最適な共通化の比率を見つけ出すことが重要だとする。このあたりのさじ加減が重要だというのである。

 本特集ではまた,共通化した構成要素を基にしながら,各国のニーズに応じてきめ細かく対応することも大切だと主張する。例えばインドではベジタリアンが多いので,野菜室の機能を高めた冷蔵庫へのニーズが高いという。

 ただし,各国のニーズにきめ細かく対応していくと,どうしても専用部品を開発することになりがちである。そうなると,共通化とは相容れなくなる。共通化と専用化のさじ加減はますます難しくなるのではないか---。そんなことを考えながら,日経ものづくりが4月12日に開催した「コラボレイティブものづくりデイ2006」に参加した。講演をいくつか聴いているうちに,電子と機械という違いはあるものの,製品の競争力の根底にあるのは「共通化のさじ加減」ではないかと感じた。

共通モジュールの「さじ加減」

 ある精密機器メーカーの担当者は講演で,逆説的だが「いかに作らないか」を目標に掲げていると語った。ここで言う「作らないこと」とは,第一にシミュレーションを行うことによって試作品を作らないようにすること,第二に共通化を進めることによって新規に開発する専用部品を減らすことである。

 共通化を進めるためにこのメーカーは,部品のモジュール化を組織的・戦略的に進めている。ある部署が開発して各機種に使い回せそうなモジュールを「共通モジュール」と認定し,製品開発時には共通モジュールをできる限り使うように義務付けている。ベテラン技術者からなる共通モジュール管理専門の部署を設けて,新規部品を開発するときにはそこに申請し認可が必要というほどの徹底振りである。

 もちろん製品は機種によって,まったく新規なものもあれば,シリーズの中の一つということもある。新規機種では共通モジュールを使う範囲は狭くなるし,シリーズ機種であれば共通モジュールを使う比率が上がる。機種によって,共通モジュールと新規専用モジュール・部品をどの程度の比率にするかの微妙な「さじ加減」が技術者には求められるようだ。この会社は,こうした取り組みをすることによって,その前に比べ人件費,金型費,試作費,その他管理費が削減され,部品コスト全体を半減できたという。

共通化促進のツールが「安易なコピー設計」に