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 先週の10月18日,「FPD International 2006」の基調講演「テレビからその先へ---液晶・PDP・SEDのトップが将来示す」が開催された。各薄型ディスプレイについて,積極果敢に投資を行なっている日本企業の事業責任者に今後の戦略を語っていただいた。方式は違えど,いずれの企業もキーデバイスの薄型パネルを自社開発・生産し,薄型テレビと合わせた垂直統合モデルを推進している。講演を聴いて筆者がメッセージとして受け取ったのは,薄型テレビの大画面化と高画質化が市場に受け入れられてきており,それを支えているのは終わることのない技術進化であるという信念だった。

 筆者はこのところこのコラムで,大量生産・大量消費の技術文明は「完成期」から「伝播期」に入ってアジア諸国がキャッチアップするのは必然だとか(このコラムの以前の記事1),プロダクトアウト的なものづくりだけではなくてマーケットイン的な「売りづくり」に力を入れる必要があるとか(このコラムの以前の記事2),日本は過剰品質体質を改める必要があるとか(このコラムの以前の記事3このコラムの以前の記事4),どちらかというと夢のない話ばかり書いてきた。

 今回の基調講演を聴いて,久々にバラ色の夢を見させていただいた気がする。聴き終わって,なんとなく元気になったから不思議である。

「夢を見続ける必要がある」

 とりわけ夢に満ちあふれていたのが,シャープ専務取締役 AV・大型液晶事業統括 兼 AVシステム事業本部長の片山幹雄氏の講演である(Tech-On!の関連記事1)。講演の最後に片山氏が語った次の言葉は,深く印象に残った。

 「常にわれわれは夢を見続ける必要がある。夢こそが,技術が進化し続けるためには不可欠なものであると信じている」

 技術者が夢を持って仕事に取り組めば,技術の進化はいつまでも続くという,強烈なメッセージであった。筆者の前回のコラムでは,技術文明を植物などの生態系になぞらえて,進化の最終形にばかり目を向けたが,進化が終わらなければアジア諸国がキャッチアップしても,常に先頭に立っていられる。薄型ディスプレイではそうした力強い進化を続けなければいけない,という決意表明でもあった。

「52型の市場はある」

 では薄型ディスプレイにおける技術進化とは,具体的にはどのようなものなのだろうか。

 まずは,大画面化と高画質化の進展がその「進化」に当たるようである。シャープはこの8月より,第8世代のマザーガラスを使った液晶パネルを生産する亀山第2工場を稼動させ,42型,46型,52型の液晶テレビの出荷を開始した(Tech-On!の関連記事2)。同工場では,生産革新によってコストダウンを達成するとともに,高性能化を徹底的に進めたと片山氏は語る。

 亀山第2工場では例えば,材料やプロセス技術を変えて2000:1のコントラストをフルスペックのハイビジョンで実現した。応答速度についても,すべての機種で4msを達成できるようにした。以前は一部の機種だけだった。

 価格についても変化を起こした。52型の薄型テレビの定価は約60万円だが,量販店の店頭などでは1インチ1万円以下で売られているという。こうした高性能化と低価格化の結果「はっきりしてきたことは,52型の液晶テレビの需要があるということだ。これまで調査会社のデータなどでは,52型の市場はないなどと予想されてきたが,ここまで安く,大量に生産できるようになることまでは読めなかったのだろう」と片山氏は自信を持つ。

PDPやSEDの技術進化も進む