技術経営戦略考
目次
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日本人同士でも通訳が必要
ある大学で開かれたIT(情報技術)関連のワークショップに出席した。システムエンジニアリングがテーマであったが、話された内容は多岐にわたっていた。スピーカーも多彩で、米国や日本の大学教授、システム開発会社の研究員といった方々が演台に立った。
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ベンチャー企業にしかできないこと
最近、動画を利用したビジネスが活発化している。いや、活発化というより、百花繚乱の様相を呈している。毎日のように、「あるブログサービスが動画投稿サービスを始めた」とか、「動画コンテンツの検索技術を開発した」という動画関連ニュースが報じられている。
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「建設的議論」はできているか?
日本人は議論ができない、と指摘されることがある。根拠のない指摘と言いたいが、残念ながら思い当たるところもある。取材をしていると次のような話をしばしば聞くからだ。「経営幹部の集まる会議で、たいした議論がされないまま重大事が決まってしまう」「一件議論しているようだが、互いの主張を繰り返すだけで噛み合って…
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桜の開花と技術者問題
桜の開花は、事前予想ほど異常なものではなく、「やや早」程度で落ち着きそうだ。結果は穏当なものであったが、2月のあまりの暖かさにおののき、それを受けた記録的な開花予想におののき、その後に日本列島を覆った寒気にもおののき、「異常気象は相当なものらしい」という印象だけはしっかり人々の脳に刻まれた。
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衰退期の企業に必要なもの
以前に取り上げた日本ビクターに、具体的な売却の動きが出ている。結局は外資系のファンドが表舞台に現れる形となったようだが。同社を含め、先行きが思わしくない企業の再生には、リストラと事業開発の両輪が必要となる。どちらが欠けてもうまくいかない。だが、残念ながら、リストラは徹底的に進めるが、新たな事業開発に…
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ソニーの、もう一つの敗因
伝統的な経済学では、「バブル」発生のメカニズムを説明することが難しい。「人は合理的な判断が下せる」という前提に立っているためだ。そこで登場したのが、人の心理を反映させる経済学。「行動経済学」と呼ぶ。人間が合理的な判断が下せるとすれば、100万円儲かって、続いて100万損した場合にも大きなショックを受…
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新製品比率をみれば企業価値がわかる
シュンペーターは1934年発行の著書「経済発展の原理」の中で、郵便馬車を例に挙げてイノベーションを説明している。いわく、「郵便馬車をいくらつなげても郵便鉄道をうることはできない」。同質のものをいくら重ねても本質的な変化にはつながらず、そこに異質な新しいものを導入することによって初めて飛躍的な革新が実…
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「日本的経営」と「日本的な経営」
人は、自身が持つ原風景を普遍的なものと思い込んでしまう癖があるのかもしれない。ちゃぶ台というものがある。生活が洋風化する以前の日本では、庶民はずっとこのちゃぶ台を使って食事をしてきたのだと多くの日本人は思い込んでいる。ところが、これが広く使われていたのは昭和期の前半を中心とした、歴史からみればごく短…
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利益を蝕む「自社技術偏重症候群」
「研究開発マネジメント」という言葉も「技術マネジメント」という言葉もよく耳にする。しかし、この違いについての明確な説明をあまりお目にしたことはない。些細なことのように思われるかもしれないが、私はそこに、日本企業が抱える問題の根深さを感じるのである。
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なぜ日本ビクターは売られるのか
昨年末に松下電器産業が日本ビクター(JVC)を売却するという報道が相次いだ。松下の創業者である幸之助氏が犬のロゴマークに魅せられて傘下に収めた日本ビクターであるが、松下がいったいどこに売却するのかが注目されている。ファンドを一旦通す形になるにしろ、JVCブランドを外資系、特にアジア系の企業に売却する…
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将来が心配な企業の「文化と風土」
経営と技術の融合を基本コンセプトとした経営コンサルタントとして活動を始め、すでに20年が経過した。この間、米・欧・韓など海外企業を含め、製造業を中心とした多岐にわたる業種の企業に対して多くのコンサルティングを行ってきた。この経験を通じて技術経営を考える時、「企業の文化・風土」というものが、極めて重要…
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ソニーにもノキアにも作れなかったワケ
アップルのスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)が1月9日、同社のイベントであるマックワールドにおいて、「iPhone」と呼ぶ携帯電話機を発表した。単にアップルがコンピュータとiPodに加えて携帯電話に進出したということではない。「技術経営」や「ものづくり」という観点から見ると、二つの際立った…
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松下にあって日立にないもの
技術経営を考える上で重要なテーマは、「技術」をどうとらえるか、ということだろう。かつて、「まず技術ありき」という考え方があった。つまり、発想の原点に技術を置く。そのうえで、いかに技術を活用して商品を開発するか、そして事業へどのように結びつけるか、と考えていく。言い換えれば、個別の視点を出発点とする「…
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勝手に考える三洋電機再生計画
このところ三洋電機に関する報道が新聞を賑わしている。12月7日、NTTドコモが三菱電機製の携帯電話端末に使う電池パックを回収すると発表したが、不具合の原因は三洋電機の子会社が供給したリチウムイオン電池であったという。これに先立つ2カ月の間にも、目に留まった新聞記事だけで次のようなものがあった。
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松下幸之助のDNAを継ぐもの
「中村君(松下電器産業の中村邦夫会長)は幸之助流経営の破壊者だ、とマスコミは説く。でも、まったく違う。幸之助のDNAを最も濃く受け継いでいるのが彼だ」---。先日、松下電器産業の元副社長、水野博之氏にお会いしたとき、こんな話を伺った。
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通る企画と、通らない企画
新事業や新製品のアイデアというものは結構出てくるものだ。問題はそのアイデアが事業や製品にまで至らず、どこかで消えてしまうことにある。一応、アイデア自体はなかなかのものであったとする。それが消えてしまう理由は色々だ。提案者である社員の立場から見れば、例えばこんなことだろうか。
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開発費を使うと企業価値が下がる?
「我が社は研究開発を重視しているので、どんなに苦しくても売上高の10%は研究開発費に当てることにしている」。経営幹部が研究開発活動について語る時、よく使われる表現である。売上高に対する研究開発費の比率を経営トップの研究開発活動に対する取り組み姿勢を示す一つの指標として使っているのだ。だが、この研究開…
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経営者と投資家の異床同夢
近年経営のいろいろな局面においてステークホルダーという言葉を耳にするようになったが、これまでの日本の経営者にはこの問題に対する意識が弱かったと思う。しかしながらコーポレートガバナンスについての議論が高まるにつれ、この問題を避けて通れなくなり、研究開発活動に対しても影響を及ぼすようになっている。
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ソニーは本当にダメなのか?
イノベーションを求める声が高まっている中、日本の代表的なイノベーターであったソニーの低空飛行が続いている。経営陣を変え、なんとか復調してきたところに、電池トラブルが発生、パソコン・メーカーがソニーを訴えるという報道もされている。10月24日にソニーは、原因を説明する会見を開き、ノート・パソコン用のリ…
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「技術力一流、産業競争力二流」のワケ
これからしばらく、「技術経営戦略考」の場を借りて筆者が考える実践的テクノロジーマネジメントの考え方・進め方について解説していきたい。全体を貫くテーマは、「企業における研究開発活動をさらに経営へ役立つようにするにはどうしたらよいか」というものである。