技術経営戦略考
目次
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ウォークマンと柔道が失ったもの
ソニーの業績不振に関して語られてきた文章は数え切れないほどあります。同社は戦後日本の成功モデルの代表選手のような存在であり、敗戦によって失われたプライドを取り戻してくれた日本の宝物だといえるでしょう。ソニー論の多さは、それだけ愛されているということの証左なのかもしれません。ウォークマンとi-Podの…
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「絵に描いた」ディスプレイ
技術の「目利き力」とは何か (4)
1969年のモット報告がきっかけを与えたあと、ケンブリッジ現象を現実に支えてきたのは、成功者たちであった。成功者がエンジェルに転じて、そのキャピタル・ゲインを次の有望なベンチャー企業に資本投下する。シリコン・バレーの場合、その最初のエンジェルとなったのはアーノルド・ベックマン(Arnold Beck…
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「技術の日立」が後れをとるワケ
技術の「目利き力」とは何か (3)
実はARM1をリリースした1985年、エイコーン社はオリベッティ社(Olivetti)の子会社となっている。それと同時に、ハウザーはオリベッティ研究所(Olivetti Research, 写真5)の副社長に就任。ホッパーを研究所長に据える。
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ケンブリッジ現象
技術の「目利き力」とは何か (2)
ケンブリッジ大学は、1970年代から産業との連携を強めた。その発端は、第6代キャベンディッシュ・プロフェッサー(Cavendish Professor)のサー・ネビル・モット(Sir Nevill Mott)が1969年にまとめあげたモット報告にある。このモット報告は、それまで雇用を抑制してきた政策…
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3兆4000億円捻出の超裏技
あまり突飛なことは書きたくないのですが、景気対策の財源を探しているうちに「1000円札を1000円コインに変えると3兆4000憶円の財源になる」という面白いことが解りましたので、ご紹介したいと思います。
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研究者よりプロジェクト・リーダー
技術の「目利き力」とは何か (1)
英国ケンブリッジ大学(写真1)での生活も、この3月で1年になる。その間に、米国発の金融危機が世界に拡散し、金融業に偏りすぎていた英国はその余波をまともに受けて突然の不況に見舞われた。2007年には3%以下だった失業率は、いまや10%に達すると見積もられている。ケンブリッジですら、若いホームレスが突…
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真冬に屋外で仕事をするワケ
オバマが大統領に就任してからしばらく経ちますが、依然として「想定外の歴史を経験した」という気持ちは強く残っています。政府での経験が浅いオバマは果たして困難な課題を克服できるか。その点に関しては誰も確かに懸念しています。それでも、お祭り気分が中々消えないのはなぜでしょう。
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舌を出して走れ
私が大学生時代のことですから、かれこれ25年くらい前の話になります。「工学部応用化学科」というよりは「体育会競走部」所属と言った方がよいほど、もっぱらはべっていて、100メートル走の練習に明け暮れたアスリートな4年間でした。
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派遣禁止の根っこにあるもの
厚生労働省の調査(2008年12月19日)によると、昨年10月から今年3月までに解雇された/される非正規社員の数は全国で約8万5000人、1415件となっています。そのうち約7割が派遣社員です。8万5千人のうち、質問に回答したのは3万5208人。驚かされるのは、そのうち2157人が、なんと住居喪失者…
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バーズアイと大和田さん
はじめまして。ルーシー・クラフトです。ひょっとしたら、ご無沙汰しております、かな。2年にわたり、別のサイトで「反リーダーシップ論」のコラムを連載しておりましたが、年も改まり、新たな連載に挑もうかと思っている次第です。日本にはや20年以上も滞在しているアメリカ人の女性ジャーナリストという、ちょっと変わ…
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中小企業緊急保証は1月中にも枯渇する
臨時国会も12月25日に閉会する見込みとなりました。結局、色々と議論があった「追加景気対策」、つまり「二次補正予算」は国会で議論がされないままに終わりそうです。次の国会は1月5日から開会されるとなっていますが、「本当にこれで大丈夫か」との思いが私にはあります。
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景気対策の議論に科学的な効果分析を
10 月30 日に「生活対策」と名づけられた追加景気対策が発表されました。「世界の金融資本市場は100 年に一度と言われる混乱」との現状認識の下に作られたものです。その最優先課題は「金融資本市場の安定確保」。さらには、3つの重点分野として「生活者の暮らしの安心」、「金融・経済の安定強化」、「地方の底…
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技術者の誇り
「あいつペラいよねー」「まじペラ男だね」。ギャル語です。薄くて中身のない軽薄な奴という意味です。『渋谷語辞典』(渋谷語製作委員会編)によれば、今どき「チャラい」はもう古臭いそうですから気をつけましょう。若者の国語力の低下が騒がれますが、大発展する顔文字も含めて平成ギャルたちの「国語力」はなかなかどう…
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中国の破綻という最悪の事態に備える
10月10日午前の日経平均株価は暴落し、一時的に前日比1000円超安の8110円台まで値を下げました。同日は朝から奇しくも民主党の金融対策に関してメディアの方々に説明させていただいていたのですが、そこへ「大和生命が破綻」の連絡が入り、円高の加速などもあり大幅に株価が暴落したのです。
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「こちら側」で待ち伏せろ
技術のルーツを考えてみると大きく分けて二系統の出自に分けることができるように思います。食器や文具のような日常の生活の利便に供する道具作り由来の世界と、治山治水などのインフラ土木工事のような世を治める政治に直結する技術の系譜です。太古の昔から、後者を制する者が時の為政者となってきました。星の観測からナ…
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リーマン・ブラザーズ破綻が地方を揺さぶる
アメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズ・ホールディングが15日に連邦破産法11条の適用を申請し、実質的に破綻しました。私もこの報道にはびっくりでした。なぜなら、アメリカ政府が救済・経営者処分といった対応をとると思っていたからです。先日、アメリカ駐在の政府高官の話を聞いたのですが、「大統領選挙中だ…
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ソニーは“PSP Phone”、シャープは“Zaurus Phone”を出さないか?
携帯電話の世界で最近の注目事項と言えば、先日日本でも発売されて話題になったアップルのiPhoneであり、もう一つはグーグルが提供する携帯電話用ソフトウエア・プラットフォーム「Android」だろう。
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日本よ、美しく負けなさい
4年ぶりのオリンピックイヤーということで、この夏は北京の話題で盛り上がっています。中でも私には、柔道女子の谷本歩実選手のオール一本勝ち金メダルや、体操男子の団体戦銀メダルの健闘ぶりの報道のされ方・讃えられ方が印象に残りました。いずれも「美しかったこと」が評価されたからです。
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ガラパゴスでいいじゃないか
投機マネーの乱入で未曾有の高騰を続ける石油や穀物。実体経済を脅かす肥大化したバーチャルな金融資本の狼藉ぶりが大問題になっています。これにもからみ、よく言われるのが「二つの資本主義のバランスが崩れている」ということです。一つはモノづくりを前提とした産業資本主義、今ひとつは経済の血であるお金を中心に考え…
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海外で稼いだ利益の行方
国内企業の海外生産比率は、2000年には24.2%だったものが2007年には31.4%まで上昇し、同時に海外利益が大幅に増加しています。2000年には約2.3兆円だったものが2006年には9.6兆円と4倍以上になりました。2007年3月期における上場企業の営業利益の3割は海外からのものとなっているの…