技術経営戦略考
目次
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日本型イノベーション・システム
産業革命をイノベーション論から捉え直す(7)
猪瀬氏が示唆されていたように(前回記事参照)、戦後日本がスムーズに米国にキャッチアップできた理由は、(1)戦前の日米の技術力が、ある分野では実は肉薄していたということ、そして(2) 戦後、覇権国の米国がフォロワーの日本から科学者を招いて惜しみなく彼らの技術とシステムとを教えたということ、この2点にあ…
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日本の行く末を考える
産業革命をイノベーション論から捉え直す(6)
16世紀まで「取るに足らない」、「貧しい、辺境の、遅れた」国であった英国が相転移をおこして、19世紀までに世界の覇権を獲得した。それは、これまで5回にわたって説明してきた通りだが、そのメカニズムは・・・
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やっぱりそのツケは税金で払う
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破壊をもらたしたのは二人の職人だった
産業革命をイノベーション論から捉え直す(5)
前回までに鉄製大砲のパラダイム破壊性を述べてきた。これは、図3において、A→S→P→A* というプロセスとして表現できる。このプロセスで示すように、鉄製大砲は「パラダイム破壊型イノベーション」の要件を備えている。
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儲けようと開発しても儲からない
産業革命をイノベーション論から捉え直す(4)
過去の大きなイノベーションについて、イノベーション・ダイヤグラムを描きこんでみると、興味深いジレンマに気づく。それは、ラディカルなイノベーションであればあるほど、イノベーション・チェーンを持続的につむいでいくために本質的なプロセスは、つねに土壌の下にあって価値創造には直接的にかかわらない「知の創造」…
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居酒屋タクシーの裏側
財務省や金融庁など9省庁の役人が深夜にタクシーで帰宅する際、運転手(おそらく個人タクシー)から「ビールやつまみ」の提供を受けていたことが問題となっています。なかには、現金を受け取った例もあるようで、タクシー料金がキックバックされていたようです。これはもはや犯罪でしょう。悪いことは悪いこととして、問題…
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「知の創造」と「知の具現化」
産業革命をイノベーション論から捉え直す(3)
薬師寺泰蔵は『テクノヘゲモニー』のなかで、「ある特定の国だけが突然かつ急激に国際舞台に台頭する鍵は、『技術の模倣+アルファ』である」と主張し、この「技術の模倣+アルファ」を、エミュレーションと呼んだ。ここで問題になるのは、「+アルファ」とは何かだ。それは「競争」と「外部技術」であると彼はいう。すな…
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彼を破天荒な行動に走らせたもの
産業革命をイノベーション論から捉え直す(2)
『テクノヘゲモニー』は、次のように主張する。「ある民族が誇り高く、高度な固有の文化を持っているとき、その民族は奢り高ぶり、あまり外部のものを真似ることができない。プライドが許さないからである。これに対して、民族的に混血を繰り返している、いわば流動的状態にある民族は、そのような硬直的な文化感がなく、し…
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英国だけにそれができたワケ
産業革命をイノベーション論から捉え直す(1)
3月の終わりに英国ケンブリッジ大学に赴任して、早くも2カ月が過ぎた。来年の3月までの1年間、ここケンブリッジ大学に31あるカレッジの1つクレアホールに、在外研究員として滞在する予定である。かつて長らく南フランスに住んだときにも感じたように、暮らして初めてその国の歴史のさまざまな必然が見えてくる。銅鑼…
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【宇宙戦略(3)】宇宙基本法の成立を妨害する官僚たち
2008年4月22日火曜日の朝、私は日本経済新聞の1面を見てびっくりしました。なんと「宇宙基本法 防衛目的利用を解禁」と出ているではないですか。実は、前日の夜にある新聞社で記者をされている方からお電話をいただき「文部科学省から宇宙基本法の話が漏れてきている」との情報を得ていましたが、まさかこんな論旨…
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【宇宙戦略(2)】このままでは日本の宇宙産業はなくなる
わが国の宇宙産業、特にロケット打ち上げ産業は完全に「国内の官需頼り」になっています。この状況については以前に触れさせていただきましたが、実際、2005年の商業ロケット打ち上げの受注はゼロでした。人工衛星については、三菱電機はがんばって持ちこたえていますが、富士通は人工衛星ビジネスから撤退、NECと東…
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誰も言わないガソリン税騒動の真因
現在、国会では「道路特定財源の一般財源化」と「ガソリンなどの暫定税率の廃止」が議論されています。福田首相は「平成21年度に道路しか使えない財源を医療や教育などにも使えるようにする」「暫定税率の見直しは、税制抜本改革に併せて行う」と説明されていますが、どうなのでしょう。
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「事業」と「技術」を混同してはいないか
新聞報道などからも感じられる通り、日本企業においても本当の意味での事業のRestructuring(戦略的事業の再編)が電機関連業界において起こりつつあるようだ。すなわち、事業拡大=売上増を基本として追及してきた日本企業が、その視点を企業価値へと転じてきていることを、単なる掛け声ではなく実際の行動と…
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プロジェクトXの種
今回は、ある素材メーカーでの技術者にかかわるエピソードを紹介致します。それは材料の強度物性を毎日測定している現場で起きた「ちょっとしたいい話」です。
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【宇宙戦略(1)】役所が日本の宇宙開発をダメにする
2007年6月、第166回国会に与党(自民党+公明党)が議員立法「宇宙基本法」を衆議院に提出しました。その審議は参議院選、安倍総理の辞任などがあり止まっていましたが、いよいよこの通常国会で動き出します。本法案は、わが国の宇宙開発に関する総合的な政策を定めたもので全35条。目的は、ミサイル防衛など目的…
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技術者が非論理的であることの強み
一般の人からみた「技術者」のイメージとはどんなものでしょうか。もちろん、技術者と一口に言っても実際には色々です。仕事の内容もかなり違うでしょう。ですからそのイメージもまちまちでしょうが、一つだけかなり共通していることがあるように思います。
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使えるロードマップと使えないロードマップ
多くの読者の方々にとってロードマップという言葉は特に目新しい言葉ではないだろう。テクノロジーロードマップという言葉や手法は新しいものではなく、随分以前から多くの企業で使われているからである。ところがそれらは、企業レベルでコンセンサスをとった手法にはなっていない場合が多い。
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韓国が747政策なら、日本は555政策でどうだ
今年の1月中旬に、アメリカと韓国の国会議員それぞれ4名が東京に集まり、外交政策などについて議論する機会がありました。テーマは、安全保障から経済政策、環境政策など多岐に亘るものでしたが、私が特に強い衝撃を受けたのは「韓国の新大統領 李明博氏の経済政策」です。
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マーケティングは研究開発活動そのものである
筆者は技術と経営の融合に重点をおいたマネジメント・コンサルタントとして活動しているが、最近多くの企業で「良いテーマが少ない」「有望なネタが見つからない」という声を耳にする。
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空気を読めばものづくりはダメになる?
書店のビジネス書コーナーに並ぶ書籍のタイトルに「ロジカル」とか「ロジック」という冠のつくものが増えてきました。仕事のやり方を、思いつきであいまいに進めるのではなく、もっときちっと論理的に整合させないと世界から取り残されるという主旨のハウツーものが多いようです。