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 うまく回るビジネスは、「深層にビジネスを底支えする要素、表層にはお金が回る、時代に合ったビジネスモデルがあり、かつそれら2層を繋ぐための中継層としての戦略や仕組みが備わっている」。これを3層構造と呼び、この構造を備えていることが「よい企業」「よい事業」の条件であるというのが、私の持論である。

 3層のそれぞれの構成要素はビジネスの内容によって様々だが、深層には基盤技術や基本コンセプトなどがあり、表層にはビジネスモデル、中継層には表層と深層を繋ぐための戦略と仕組み(人事・評価システム、採用・教育制度、情報収集・分析機能などを含む)がある。中継層は、表層のビジネスモデルを時代に合わせて修正したり新たに生み出したりする役割も担っている。多くの場合、これらの連携がうまく回って表層のビジネスモデルを支えているのである。

表層を時代に合わせて常に見直す

 深層部分についていえば、技術を立脚点とする企業はコアコンピタンスとしての独自技術をこの層に持つ場合が多いだろう。ただし、いくら技術が優れていてもビジネス自体がうまく回るとは限らない。そして、深層には必ずしも独自技術がある必要はないのである。例えば、革新的なコンセプトが深層にあり、これが中継層を介して時代にマッチしたビジネスモデルとして具体化されることで、事業が成功する例は多くある。米Apple社の「iPod」などは典型例だと思う。

 これを3層構造の要素に分解すれば、深層にはネットを使った音楽配信というコンセプトがあり、表層には「iTunes」とiPodを連携させることでコンテンツ配信を実現するというビジネスモデルがある。中継層では、iTunesやiPodの普及率、ネット環境の変化などに応じて料金や使用する技術を精査しながらビジネスモデルを変化させていく仕組みが機能している。このように、表層のビジネスモデルは、中継層によって時代に合わせたビジネスモデルに常に修正される必要がある。野村進氏の著作『千年働いてきました』には、深層部を持ち、これを基に表層部分を時代に合わせたビジネスモデルに常に修正し維持してきた日本の老舗企業が多く紹介されている。ぜひ一読をお勧めしたい。

 この3層構造を引き合いに出すことで言いたいのは、「よいものは売れる」という考え方だけではビジネスは成り立たない、ということだ。ビジネスのコアコンピタンスの一つになり得る深層部分の「技術」は、競争力を保つための一手段ではあるが、技術そのものがよければ必ず製品が売れる訳ではない。顧客は技術を買うのではなく、技術によって実現される機能やサービスなどに価値を感じて初めて購入を検討するのだから。それをしばしば見落としてしまう。「技術には自信がある」というプロダクトアウト型の企業が、よく陥ってしまう罠である。

 だからこそ、新たなビジネスを開発する際は、自社の深層部分と表層であるビジネスモデルを巧みに擦り合わせていく作業が重要になる。コアコンピタンスを顧客が必要とするかたちにまとめていくのである。例えば、まず競争力のある技術や強固なコンセプトを基に製品やサービスを具体化したとすれば、それを前提に利益や競争力が確保できるビジネスモデルを立案する。それだけで満足してはいけない。事業プランを構築したら、それを顧客の目線で再度検証する。こうしたプロセスが必要になるだろう。

なぜ気軽に頼めるメイドサービスがないのか