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 この報知新聞の予測を抜粋して検証してみましょう。(<「ヨーロッパで戦争が起こったときには東京でも居ながらにしてカラー写真を電送できるだろう」「写真電話を使えば遠距離の品物を選んで購入できるようになる」「列車には冷暖房が完備し、石炭を使わない動力の高速列車は東京~神戸間を二時間半で結ぶだろう」「ツエッペリン式の飛行船は改良され軍艦が空を飛び空中砲台となる」「電気で野菜を成長させ空豆はオレンジほどの大きさに改良されるだろう」「運動術や外科医療の進歩で人の身長は六尺(180cm)に達する」「人智は遺伝により大いに発達し、無教養な人は居なくなる。男女とも大学を卒業しないと一人前とみなされない」などなど。

 いかがでしょう。鳥肌が立つくらい本質を見抜いていると感じませんか。細かい突っ込みは野暮として、電子工学や機械工学、遺伝子工学などにおいて既に起こった未来を素直に的確に予言しています。

 もちろん外れた予測もあります。「獣語の研究が進み人と犬猫類は自由に会話できる。下男下女は犬に取って代わられ犬が人の使いをする」など一見笑い話のネタになりそうな予測もありました。けれど、これだってまんざらでもないものです。2002年にタカラ(現タカラトミー)が発売した「バウリンガル」はさておいても、1901年の50年後に初めて登場した日本の盲導犬は、現在では1000頭近くに増えています。脳生理学の進歩もすさまじく、人が頭で考えただけでコンピュータのカーソルを随意に動かしたり、マイクロチップを神経系に結節・搭載したゴキブリをリモコンのように遠隔操作できたりする時代になっているのです。獣語を解するというSFチックな話も、早晩実現するかもしれません。

エレクトロニクスの能力「全開」

 こちらはそのあたりにして、次に経済企画庁が20年前に作った、今から3年後に当たる「2010年の世界」を見てみましょう。エレクトロニクスが「能力全開」で、生活はフルオートメーションです。子供部屋の机に埋め込まれたテレビ電話では遠隔教育が実施されており、お母さんの部屋の壁のモニターではホームショッピング、机では知的業務の在宅勤務、電子ベッドでは在宅医療、ベビーベッドもフルオートで遠隔育児を支援している。

 家の裏手では水耕栽培機が野菜を育て、ホームセキュリティも高度なセンシング技術で支えられ、家の内外には無人の乳母車のような外観のカートが自律的に走り回って物資の配送役を担っています。この未来像で描かれているのは、家事育児から開放された女性が大きく社会進出し、病人、老人、幼児などの弱者は遠隔モニタリング技術で支えられているという世界なのです。

 この未来像、何か釈然としない感じがしませんか。個々の技術水準、達成可能になる機能についてはなかなかケチがつけにくいのですが、「何か違う感」が拭えません。その原因は、二つあると私は思っています。

 一つは、冒頭で述べた「変曲点」が描かれていないこと。その典型例といえるのが、コンピュータに関連する予測です。

ケータイもパソコンもない?

 この未来予測が作成された1987年といえば、パソコンやインターネットが普及する前夜に当たるわけですが、この未来像で描かれているコンピュータは、現在のパソコンとは違ってどれも特定用途に向けた専用品で、それがユーザー別に準備されて机や壁にビルトインされているのです。現在、さまざまな機器にマイコンが組み込まれていることを考えれば、ある意味当たっているのかもしれませんが、パソコンの爆発的な普及は見通せていなかったようです。(次のページへ