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 日本は世界一の成金である。これは昨年12月に発表された国連大学の統計から明らかになった。スイスも米国も抜いて,ぶっちぎりの金持ちである。確かに日本中に高級ブランド店が溢れている。多くの女性がLouis Vuittonのバッグを持ち歩いている国は,日本だけである。

 女性だけではない。日本の食料自給率はカロリーベースで4割である。後は海外から買い捲ったもの。特に,マグロや海老などの高級食材は輸入頼りである。高級牛肉は日本製だが,その飼料は輸入品である。

 派手な出費は誰かが賄わなければいけない。誰が外国から稼いでいるかが大事である。それは,もちろん読者である技術者諸氏である。貿易黒字の大半は製品輸出であり,その多くは自動車である。もっとも,トヨタ自動車,ホンダ,日産自動車などの完成車メーカーだけではなく,Tier 1,Tier 2,Tier 3などの部品メーカー,そこに素材やエネルギーを供給する企業の貢献も含めれば40兆円産業である。これは日本の国家予算の約半分の規模である。

 海外の人が知っている日本とは何か。それは,トヨタ,ホンダ,ミツビシ,ソニーなどなどの製造メーカー名なのだ。技術立国である。農業でも,資源でも,観光でも,外交でも,金融でもない,技術しかない国である。

 それにも関わらず,技術者の地位は低い。高度成長期には,それなりの尊敬を集めた技術者という職業も,安定成長期には稼いで当たり前。都会から離れた工場で,黙々と新製品を開発し,生産ラインを改善している技術者は報われない。メーカーには技術者が必要である。もちろん,人事や経理を司る人も必要である。メーカーの新入社員の理系と文系の割合は10:1程度であろうか。それが役員比率を見ると,文系が5割以上を占める企業も珍しくない。技術者は生かさず,殺さず。従順な現役技術者は黙って働き続けている。好況時には無理を重ねて,不況時にはリストラに怯えながら。身近で見ているだけに,頭が下がる。

 しかし,現在の技術者の子供たちは親の仕事を引き継ぐのだろうか。子供が技術者に成りたいと言ったとき,親の技術者は何と答えるのだろうか。技術者ではないかもしれない貴方の配偶者は何と答えるのだろうか。

 答えは既に出ている。大学の工学系志願者が半減している。ただでさえ子供の数は減っている。それ以上に,技術者の卵は減っている。皆さんに後継者はいない。他人事ではない。私が教える学生がいなくなっている。

 不人気な技術者という職業がなくなるのは致し方ない。しかし,日本は何で食べていくのだろう。それ以前に,この国の快適な環境は技術者によって提供されている。そのことを豊かさを享受している国民は理解しているのだろうか。電気やガスは供給されて当たり前。ゴミや汚水はシステマティックに処理され,大雨時には技術者がダムや下水を操作している。電車は時刻どおり運行され,自動車には道路交通情報が提示される。キャッシュカードもインターネットバンキングも技術者が縁の下の力持ち。

 技術者が不足するとは,社会が不安定化することである。技術者が居なくなるということは,社会が崩壊するということである。

 この国の対策は常に後手である。問題が生じ,手遅れになってから対策が始まる。経験不足,人手不足から事故は起こる。既に多発している。高圧保安ガス協会の統計によれば,事故が倍増している。事故が起これば技術者が責められる。技術者だけで対策がとれないときに企業が動く。一企業で対策が取れないときに,産業が動く。一産業で対応できないときに国が動く。

 そこまで寝て待つのも一興。この未来予測をネタにビジネスを考えるのも一興。世の中は味わい深い。なかなか辞められないのが技術者。でも,後継者がいないことは深刻である。外国人を教育するか,それとも技術者代わりのロボットを開発するか。皆様のお知恵を拝借したい。