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 日なたもあれば,日陰もある。多くの技術者は日陰者のようである。もっと日なたに出てもらいたい。私自身も技術者が表に出てくる活動に汗をかいている。今回は,その一端を紹介しよう。大企業,中小企業という分け方もあるが,ここでは産業別の日の当たり方を見ていこう。

 製造業における理系学生にとっての人気企業は,日経ナビによれば自動車メーカーや弱電メーカーが上位を占めている。IT関連メーカーは,とりあえず花形と言えよう。素材メーカーでは15位に旭化成グループ,エネルギー関連では22位に東京電力が顔を出している。

 20世紀には電子計算機の発明があり,素材とエネルギーにITという概念が加わった。世紀末に向けてはITの時代という言葉も姦しかった。しかし,既に21世紀である。ITがITだけではやっていけないことは明白である。良い素材,良いエネルギーあってのITである。別な言い方をすれば,情報とエネルギーと素材の再統合が21世紀の始まりのキーワードである。たとえば,RFIDは物と情報の統合,電力線通信はエネルギーと情報との統合と位置づけられる。

 自動車や家電のIT化が進み,そこが競争力になっている。しかし,良い製品は良い素材,良いエネルギーがあってのことである。燃料電池はエネルギー革命であり,発電セルの寿命は良い素材が握っている。電子制御された高性能の自動車が発売されているが,良い鉄板が見栄えと安全を提供している。

 情報が頭なら,エネルギーや素材はボディである。健全な肉体に健全な精神が宿る。どうも,学生の志望は健全ではないように思える。もっとも,千人単位で新卒を採用する自動車や弱電に比べて,数十人単位でしか採用しないエネルギー・素材ではランクに差がつくのも仕方がないのかもしれない。

 さて,ここからが本題である。このエネルギーや素材産業にも,当然情報技術者が必要である。計器からの情報を集めたり,監視室から操作を指示したりする計装(計器装備)技術者である。最近は,SCM(Supply Chain Management)やERP(Enterprise Resource Planning)などの三文字言葉のせいで,現場情報を企業情報と連結させる仕事もさせられている。

 日の当たらないボディ産業のIT技術者。これは,なかなか微妙な立場である。簡単にいえば,伝統ある機械や電気の技術者の影で評価されていない。歴史が浅いことも一因だが,ITが目に見えないことも大きい。

 さて,計装技術者,素材やエネルギー業界の情報技術者の技術情報交換の場として計装制御技術会議のお手伝いをしている。プラントやコンビナート,新産業都市なる言葉が華やかだった時代から続いている会議である。

 この会議では,技術者の地位向上にも力を入れている。今年は,戦略計装というセッションも作って,経営者も交えて積極的な意見交換を行う企画を立てている。そこで,議論する戦略計装八か条を以下に紹介する。「計装技術者」という言葉を「技術者」に置き換えていただければ,皆様にも通じるであろう。是非,目を通していただきたい。

戦略計装八か条

(1)計装技術者は先を見ろ
社会と産業の変化にどう対応するかが企業戦略。計装技術者は10年後の社会・産業の姿を予見し,より快適で健全な社会・産業を描き,顧客の潜在的ニーズに合わせ,自社のあるべき将来像を考えよ。

(2)計装技術者は経営を知れ
計装技術者は,会社の方針・事業戦略を理解するとともに,自社の技術力の状況と将来性の情報を経営者に的確に伝える義務がある。経営陣の考え方を知り経営意識を持て。
生産性重視に偏重することなく,安全・環境対応などのバランス対応を思考せよ。

(3)計装技術者は,自ら時間を創り出せ
既存業務は効率的に対処し,時間を創れ。時間がないは言い訳。部門の枠を越えたより付加価値の高い改革提案を行い実行する時間を持て。

(4)計装技術者は,変人となれ
受動的に既存業務に埋没するなかれ。計装技術者は現場の各部門の考え付かない発想力で創造性豊かな業務革新を推進する組織であれ。
同じ意見は二つはいらない。違う意見が集まって文殊の知恵ができる。

(5)計装技術者は融通が命
社内社外の協力者を組織化せよ。社内の機密が・・・は,言い訳の常套句。人手が必要なら,他社からもってこい。計装技術者は技術のプロデューサであれ。

(6)計装技術者は情報武装せよ
計装は情報技術である。情報の大切さは,誰よりも熟知しているはず。
また,社会動向と技術動向は相関するべきものであり,時代にあった情報を得よ。
メカ,反応,半導体,通信,ソフトの趨勢を見極めよ。新しいものは,足元でなく,他所からくる。机から離れない計装技術者は会社に対する背任である。

(7)計装技術者は全社最適の立場で行動せよ
計装技術者は工場の技術者のアンカーである。部分しか見えない計装技術に価値はない
社内,社外,他産業の種々の人々と交流をしろ。計装技術者は,現場ではできない発想ができる立場にあることを自覚せよ。

(8)計装技術者は暗黙知の秘密を暴け
個人の暗黙知は,技術者の保身。それを暴けなければ伝承は絵に描いた餅。計装を武器に暗黙知を暴き,皆の財産とせよ。
さらに,計装技術者にとって計装設計思想の伝承は,次の時代を創造する重要な役割であることを認識せよ。