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 申すまでもなく、わが国にはイノベーションが必要です。そして、それを実現するためには「イノベーションのインフラ」が必要なのです。その代表例が「イノベーションを起そうとする企業が必要な資金を調達できる仕組み」、つまりは証券市場です。

 その証券市場が、機能不全に陥ろうとしています。それでも、短期的には大きな影響は現れないかもしれません。けれど長期的にみれば、このことが日本に致命的なダメージを与えることにもなりかねない。そう怖れているのです。

図1 出典:経済産業省資料に基づき作成
図1 出典:経済産業省資料に基づき作成 (画像のクリックで拡大)

 そのような状況を打破してくれる存在になるのではと期待しているのが、ロンドン証券取引所(LSE)のAIM(エイム、Alternative Investment Market)です。このことをネットのコラムや新聞に書いたら、AIMの関係者からいくつもアプローチを受けました。ロンドンから直接に国際電話をいただいたりしたのですが、その多くが「AIMを是非とも日本でも広め、日本企業をAIMに上場したい」というものです。

東証のプロ向け市場は成功するか?

 今、東京証券取引所がこのAIMと組んで、わが国にもプロ投資家用の証券取引市場を作ろうとしています。しかし、その試みはなかなかうまくいかないだろうというのが、私の見方です。

 その理由は、「市場が細かい上場基準を設けていない」という、AIMなどプロ向け市場の特徴そのものにあります。つまり、企業の資金力、企業規模、経営実績、業績や所有株式の比率といった、上場に値するかどうかを判断するための基準が設けられていないのです。

 その代わりに、上場に際して、Nomad (Nominated Adviser、上場に関するアドバイザー)との契約が義務付けられています。Nomadは発行体の株式がAIMで取り引きされるのにふさわしいか否かの審査を行うと共に、登録後は企業に対して取引所の規則の遵守、必要な情報開示などについて助言や支援を行います。

図2 出典:Grant Thornton Japan
図2 出典:Grant Thornton Japan (画像のクリックで拡大)

 このNomadが存在するため、上場の基準は不要なのです。つまりNomadが巨大な権限と責任を持って上場を決定するという、現在ある日本の証券取引市場の仕組みとは全く違ったものとなっています。ちなみに、上場の審査をNomadが担うため、審査期間が4~6カ月と、極めて短いという特徴もあります。

図3 出典:Grant Thornton Japan
図3 出典:Grant Thornton Japan (画像のクリックで拡大)

 このようにプロ向け市場は、ひたすら厳しくなっている監査会社や証券会社の審査やコンサルティングが不要という点で、極めて魅力的な市場であるといえます。けれど、この仕組みはNomadというプロがいないと運営できません。

わが国にNomadはいるか?

 問題はここなのです。わが国にNomadの役割を…(次のページへ