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わが国にNomadはいるか?

 問題はここなのです。わが国にNomadの役割を担える組織があるでしょうか。極めて疑問です。国内にもAIMのNomadの資格を持っている法人があると聞きます。けれど、AIMではほとんど活躍されないようです。

 Nomadは、言い換えれば「企業の目利き」です。これまで証券取引所の方や証券会社の審査部の方々とお会いしてきて痛感したのは、わが国にはこの「目利き」が極めて少ないということでした。つまり、「事業やイノベーション、技術などの目利きができる人材の不足」が、問題の本質だと思うのです。

 実際、東証マザーズやJASDAQなどの新興市場では、技術力など事業の将来性を精査せず、ドットコム・ブームやバイオベンチャー・ブームといった風潮に乗って多くの企業を上場させ、ブームを煽ってきました。けれどブームは必ず去ります。そして、市場は信頼を失い、その反動として上場の審査がどんどん厳しくなってきたのです。きちんと事業を目利きする人材が多くいたら、このような状況は起きなかったでしょう。

黒船こそが特効薬

 この状況を劇的に変えるには、「黒船」に頼るしかないというのが私の考えです。つまり、海外の市場に海外の証券会社などを通じて上場してしまうのです。多くの方に「日本人のくせに海外の市場を推すのか」と言われそうですが、わが国の新興企業にもっとがんばってもらうためにはこれしか道がないと思っているのです。

 実際にAIMのNomadなどと話をすると、わが国の技術力を持った中堅企業に大きな興味を示しています。このような企業が銀行の縛りからのがれ、海外で資金を調達できるようになれば、事業の拡大や海外への展開がもっと楽になると思うのです。

 私が知る企業の多くは、中国での生産を実践しています。しかしながら、インドやASEANに展開できている企業はほとんどありません。「なぜインドやベトナムに工場を立地しないのですか」とある経営者にお聞きしたら「銀行がお金を貸してくれない」との回答です。中小企業が融資を受ける地方銀行の一部には「海外展開のリスクを評価できないため、そのような案件については融資をしない」というところがあるようなのです。

 私が話をしたNomadは、このような技術力を持った企業が海外展開を果たすことに強い興味を示していました。ぜひサポートしたいというわけです。

株式市場にも国際競争を

 「そのような海外市場に頼らなくても、JASDAQ NEOが創設されたではないか」とおっしゃる方もおられるでしょう。当然、JASDAQ NEOにもがんばっていただかなければなりません。けれど、マザーズやヘラクレスといった新興企業向け証券市場が機能不全に陥りつつある状況をみれば(図1を参照)、それに過剰な期待を抱くことはできません。

 証券市場が停滞を脱し本来の機能を果たすためには、企業だけでなく証券市場も国際的な競争にもまれなければならない。そう確信しているのです。

著者紹介

藤末 健三(ふじすえ けんぞう)
早稲田大学客員教授 中国清華大学客員教授 参議院議員

1964年熊本県生まれ。86年東京工業大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に行政官として入省。95年マサチューセッツ工科大学経営学大学院に留学、96年には同大学院とハーバード大学行政政治学大学院で修士号を取得。99年東京工業大学で学術博士号(Ph.D)を取得し通商産業省を退く。同年東京大学大学院工学系研究科専任講師に就任、2000年から同総合研究機構助教授。04年民主党参議院選挙に比例区で当選する。05年からは早稲田大学客員教授、中国の清華大学客員教授も努める。公式ブログはhttp://www.fujisue.net

本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。