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 伝統工芸の職人気質は、戦後の奇跡的な復興を支えたものづくりの本質そのもの。三現主義からくる「まずやってみろ」な姿勢、本当に大事なものは形式知化できないという哲学に裏付けられた「習うより盗め」の姿勢。そして一見古臭い「理屈はもういい、やるのかやらないのか」という根性論も、実はこだわりの美学の表現形の一つでした。

 しかし同時にそれぞれにトレードオフとなる欠点があることも書き述べたとおりです。前回のコラムで力説したように、90年以降どんどん強くなるロジカルブームとは、この欠点部分にアドレスした話といえるでしょう。けれど、ゆめゆめ間違ってはならないのは、私たち日本人の本当の強みとは上のような「非ロジカルな気質」にあるのだと私は考えます。このユニークさを失ってしまっては、元も子もないのではと。非ロジカルなものの偉大さを充分理解した上で、その欠点を補うためにロジックの利点を場面に応じて使いこなす。これこそが「日本のものづくり」にマッチした、最強の手法だと思うのです。

 余談ながら、この有名人も、論理的にみえて実に非論理的です。『スタートレック』に登場するMr.スポックという異星人なのですが、主人公のカーク船長の補佐官役を務めています。彼は論理の星バルカン星の出身とかで、何かにつけて熱血派の船長に「カーク船長、それは非論理的ですね」としたり顔で指摘するのです。けど、そのフレーズ自身が非論理的だと指摘しておきましょう。本当に論理的に指摘するのであれば、「船長、それは感情的ですね」とか「帰納的過ぎますね」「暗黙知ですね」とか具体的に言ってもらいたいものです。「非」論理的とは何も言ってないじゃないですか、Mr.スポック。

著者紹介

川口盛之助(かわぐち・もりのすけ)
慶応義塾大学工学部卒、米イリノイ大学理学部修士課程修了。日立製作所で材料や部品、生産技術などの開発に携わった後、KRIを経て、アーサー・D・リトル(ADL Japan)に参画。現在は、同社シニアマネージャー。世界の製造業の研究開発戦略、商品開発戦略、研究組織風土改革などを手がける。著書に『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社)がある。

本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。