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 実際、批判コメントの中には「一般的なキャラクター像から逸脱している。それがけしからん」との意見が少なからずあった。平たくいえば、「既成の価値観を破壊し、まったく新たな価値観を提示」するのではなく、「よくあるゆるい感じにせよ」ということなのだろう。

 官公庁や各種協会などが選定するキャラクターは、しばしば「ゆるキャラ」と呼ばれる。名づけ親は、「いやげ物」(もらっても嬉しくない土産)、「カスハガ」(観光地などで売られているトホホな絵葉書)などの命名主でもある、みうらじゅん氏である。同氏には『ゆるキャラ大図鑑』なる名著もある。岩内町キャラクター「たら丸&べに子」、奥尻島キャラクター「うにまる」、道新スポーツマスコットキャラクター「プレイくん」、おらえのきりたんぽ鍋日本一コンテストイメージキャラクター「ぽん太くん」など、100に及ぶ秀逸なるキャラクターが綿密な解説とともに紹介されているらしいので、ご趣味の方はどうぞ。

 しかしこうした、コンセプトもデザインもすべてがゆるく見るものを脱力させる「ゆるキャラ」を異能人である籔内氏に望むのは、まあ無理というものだろう。彼自身、こうコメントしている。

私のデザインが今のキャラクターデザインの主流から逸脱しているとの批判が多かったことは、永く創作の現場にいた者にとってある意味で衝撃でした。今回の制作にあたって、今のマスコット業界の主流の範疇に収まるための傾向や対策を講じるということは、私は考えもしませんでした。数ある自治体イベントのマスコットキャラクターの範疇に入るものを制作したのではなく、平城遷都1300年祭のためのマスコットキャラクターを作ろうとしたのです。

会社がゆるキャラ体質だったら・・・

 多くの人たちは、こうしてできた異形のキャラクターに生理的嫌悪感を覚える。その感情の発露としてある人は500万円にかみつき、ある人は「仏教を冒涜している」と抗議し、またある人は「異形はイカン」と諭す。その果てに、作者が異能者であることを見抜き、「そもそもお前がなっとらん」と罵声を浴びせるのだろうか。

 こうした事態は、通常は起こらない。官公庁などが選定するのは、平穏無事な「ゆるキャラ」と相場は決まっているからだ。深い読みがあってやっている場合もあるだろうが、多くの場合は「天然」なのではなかろうか。お役所体質といわれる特徴の一つである「ことなかれ主義」と、「オレはセンスがある」と勘違いしたお偉方の凡庸な発想が相まって、みうらじゅん氏を狂喜させるようなキャラクターが続々登場してくるのではと想像するのである。

 お役所のことはまあ置いておくとして、企業が「ゆるキャラ体質」になってしまったら、それはそれで問題だろうと思う。みうらじゅん氏の著作に取り上げられている作品くらいゆるさも極まっていれば、それはそれで魅力的だったりしなくもないが、普通にゆるくて凡庸な商品など、腰を抜かすほど安いとか、よほどの理由でもない限り売れるわけはないのである。そんな「ゆる商品」しか出せなくなったら、企業にとって一大事である。そもそもゆるさを生む根源である「ことなかれ主義」や「勘違い幹部」は、お役所体質の主要要素だが、「大企業病」「リビングデッドな中小企業体質」の要件でもあることだし。