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言わぬが花

 ここで、もう一つ大きなポイントがある。漆塗りであることや木目合わせをしていることなど、一切自らは公言しないことだ。もし取材などがあったら、「あ、しまった言っちゃった」みたいな感じで漏らすのはアリ。店頭で店員さんなんかに言わせるのもいいだろう。けど、カタログやホームページなどでは語らない。「木材には最高級の北米産インセンスシダーを厳選し丹念に処理して」などというセールストークはもちろん厳禁である。「芯材を職人か手で作っている」などというところは格好のチャーム・ポイントであるが、それも公式には謳わない。「漏れた情報がマニアの間に口コミで広がる」のを根気強く待つのである。

 「いや、ここまでくると、さすがにやりすぎか」などと反省していると「おーいいですねぇ。ぜひやってみたい。お知り合いの漆工芸家の方を紹介してくださいよ」などと井口氏はおっしゃる。いやいや話のわかる方ではないか。

 そんなこんなで、夜は更け会議は終了した。けど、ノリノリでいろいろ考えたせいで、頭がクールダウンしない。夜中にごぞごぞとパソコンで色鉛筆について調べてみた。すると世の中はもっと進んでいるのであった。ファーバーカステルに「伯爵コレクション」の「パーフェクトペンシル」などというものがあって、そのデスクセットはメタルカバーとかペントレイとかがセットされて、鉛筆5本入で何と10万円近くもするのである。5000円で「超高級品」などとはとても呼べそうにない。

聖徳太子の遺徳にすがる

 「このあたりが薄給サラリーマンの限界か」などと一瞬思ったが、その後から何だかムラムラと闘志がわいてきた。じゃあこっちは20万円でいこうじゃないか。やりようはいくらでもある。まず、色鉛筆の命である色である。カドミウムイエローとかターコイズブルーなどいうという西洋名はやめて、花浅葱とか瑠璃紺みたいな日本の伝統色にしよう。材料にはもちろん日本画で使う岩絵具の顔料を使う。シリーズ名も「伯爵」などといわず、「色襲(いろがさね)」みたいな和っぽいものにすべきだろう。