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  「国外所得免除方式の導入で海外子会社から受取配当が増えたとしても、それが国内できちんと研究開発や設備への投資に使われるとは限らない」という批判もあります。これに関しては、回答者が少ないですが、経済産業省が行った調査で「回答企業数46社中21社が国内での設備投資・研究開発へ資金を充当する」と回答しているようです。それでも不安であれば、国外所得免除制度を使う企業には、国内での研究開発などへの投資を条件づけることも一案でしょう。

海外子会社からの受取配当の資金使途

 さらに、「国外所得免除ができると、日本企業の海外での活動を加速することになり、国内産業の空洞化を招くのではないか」との批判もあります。確かにこの懸念はあるでしょう。海外で利益を上げる方が国内で利益を上げるよりも有利であるという状況が生じれば、国内に立地した工場などが海外にますます流出してします危険性が高まりそうです。

 ただし、経済産業省の調査によると回答した49社中47社が影響なしとしているようです。製造拠点などの立地は、顧客への対応や会社の戦略で決まるものであり、税制が影響を与えるものではないなどの回答があったようです。それでも不安は拭い切れません。この点に関しては、どう対応するか、さらなる検討が必要でしょう。

 そんな課題があってもなお、早急に税制を変えるべきとの思いは変わりません。先日、ある自動車メーカーの方からお聞きした話です。「日本で開発した車を海外で作り、売って利益を上げても、ほとんどそれを日本に持ってきて次の研究開発に回すことができなくなって困っている」ということでした。多くの利益が「日本国内で投資されないで、海外に留保される」ことは、わが国のイノベーション力を強化する意味では大きなマイナスとなっています。そのことを、メーカーの方々も感じ始めているのです。

 何しろ、17兆円もの資金が海外留保されているのです。その資金が国内に戻り、様々な投資に回されるようになることの影響は、決して小さなものではないと思うのです。

著者紹介

藤末 健三(ふじすえ けんぞう)
早稲田大学客員教授 中国清華大学顧問 参議院議員

1964年熊本県生まれ。86年東京工業大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に行政官として入省。95年マサチューセッツ工科大学経営学大学院に留学、96年には同大学院とハーバード大学行政政治学大学院で修士号を取得。99年東京工業大学で学術博士号(Ph.D)を取得し通商産業省を退く。同年東京大学大学院工学系研究科専任講師に就任、2000年から同総合研究機構助教授。04年民主党参議院選挙に比例区で当選する。早稲田大学客員教授、中国の清華大学顧問も努める。公式ブログはhttp://www.fujisue.net

本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。