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 1980年代後半からATM標準化に取り組んできた通信業界にとっては皮肉なことに,商用として最も早く世に出たのは,このATMらしさをみじんも感じさせないAAL5対応製品だった。AAL5を作り上げたコンピュータ・メーカーやLANベンダーは,国際標準化作業の遅さに業を煮やして業界団体「The ATM Forum」を結成。業界標準のATM LAN対応製品を続々と発売し始めた(図1)。

図1 米Sun Microsystems Computer社のSBus用インタフェース・カード SBusカードに,ATMプロトコル処理用LSI(ATM層とAAL5を処理する)を搭載していた。本誌の特集記事「ATM LAN,舞台は標準化から市場へ」(1994年3月28日号,no.604,pp.191-207)より。
図1 米Sun Microsystems Computer社のSBus用インタフェース・カード SBusカードに,ATMプロトコル処理用LSI(ATM層とAAL5を処理する)を搭載していた。本誌の特集記事「ATM LAN,舞台は標準化から市場へ」(1994年3月28日号,no.604,pp.191-207)より。 (画像のクリックで拡大)

 しかもさらに皮肉なことに,通信事業者がATMを利用した高速データ通信サービスを開始したころ,ATM LAN市場は早くも縮退しつつあった。製品価格がべらぼうに高かったためである。その後高速LANの主役は,1994年に技術仕様が固まった100Mビット/秒のEthernetが取って代わった。

老兵は死なず,ただ消え去るのみ

 そして1995年に,TCP/IP機能を標準搭載したパソコンOS「Windows 95」が世に出てから,インターネットが広く一般に使われるようになった。ケーブル・インターネットやADSL(asymmetric digital subscriber line)といったブロードバンド・サービスが普及ペースに拍車を掛け,今や日本での利用人口は2300万を突破した。

 ブロードバンドがもたらす高速・大容量性によって,テレビ電話や音楽・動画配信などのサービスはいつでも手軽に利用できるようになった。通信業界がATMで夢見た「何でもネットワークで実現する未来社会」は,すべてインターネットが実現したといっても過言ではない。

 とはいえ,ATM技術は今でも使われ続けている。実のところ,ケーブル・インターネットやADSLのフレーム形式にATMの名を見ることができる。かつてのATM全盛時代を知る私の思いはこうだ。「老兵は死なず,ただ消え去るのみ」。

加藤 雅浩