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 こちら側,すなわちユーザーの手元では,ネットワークとの接点になる多彩な機器が必要になるだろう。携帯電話機やパソコン,テレビといった既存の機器が進化するだけではなく,さまざまな寸法の電子ペーパーや無数のセンサなどが生活に入り込みそうだ。

 ネットワークが広く深く張り巡らされるにつれて,こうした機器に求められる特性は今とは様変わりすると本誌はみる。ネットワーク時代の機器はユーザーに使っていることを意識させない,いわば「見えない」存在になる。なぜならユーザーが求めるのはサービスやコンテンツであり,機器を使うことではないからだ。

 これらの機器の数は,ユーザー一人当たり数十にも数百にもなり得る。その一つ一つが,物理的な存在感を主張し,操作に手間取り,頻繁な保守を要求したら,サービスを享受するどころではない。電子ペーパーで本を読む際に,起動に何十秒もかかったら読書は楽しめない。健康データの測定のために,多数のセンサを毎日付け外しすることを喜ぶユーザーは皆無だろう。

 今後の機器は,まず物理的な存在感が希薄になる。兆候は既に現れている。薄型のテレビや携帯電話機,携帯型音楽プレーヤーが飛ぶように売れるのは,映像や音楽,会話を楽しむ上で,大きさや重さが邪魔だからだ。もちろん物理的な存在がなくなるはずはない。ユーザーとの接点,つまりユーザー・インタフェースをつかさどる部分は残る。画面やキーボードの使い勝手に加え,持ちやすい形状や手触り,質感などが重視されそうだ。ひょっとすると家庭用ロボットが,ネットワークとのユーザー・インタフェースになるかもしれない。もちろんユーザーを煩わせない控えめな態度が望ましいが。

 機器の電力や価格も限りなく「見えなく」すべきだろう。何十もの機器の電池を頻繁に交換する作業は悪夢以外の何物でもない。数万円もする機器を何百も買うユーザーはいないだろう。何より操作を簡単に,直感的にする必要がある。無数の機器の操作方法を,ユーザーはとても覚えられない。

作り方が一変する

 「見えない機器」を作る手法は,既存の機器とガラリと変わりそうだ。機器を小型軽量にし,電力や価格をギリギリまで減らすため,見えない機器の機能は恐らくネットワークの「向こう側」に置かれる。こちら側には,ユーザー・インタフェースとネットワークの接続機能ぐらいしか残らない。

 この構成では,ソフトウエアのメンテナンスや更新が大幅に楽になる。ユーザーが所有するコンテンツやデータも向こう側に置けば,端末を問わずにアクセス可能になる。データをUSBメモリで持ち運ぶ手間や,大事なファイルをコピーし忘れるといった心配が無用になる。サービス事業者側には,複数のユーザーから集めたデータや行動履歴を統計処理することで,新たな付加価値を生める可能性がある。