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 西氏はすべてのクルマを売り払って、改めて自分にとってのクルマの意味を考えたという。その結果,「クルマとは何かというと,造った人の気持ちのシンボルだと思うんですね。そのクルマを造ったエンジニアやデザイナーに共感することによって所有するものではないかと。クルマの背後にいるエンジニアの顔を思い浮かべながら、クルマっていうものは意識するものじゃないか、と思ったのです」と語る。こうして、西氏は、学校の教員となり、原稿執筆や講演をこなしながら,以前よりはお金のない状況で中古車をオークションなどで購入して、再びクルマをコレクションをするようになる。そのあたりの心境を、西氏は次のように語った。

 「これは非常に面白い現象だったんですけど,私が新車を買って乗っていたときには,クルマを持っているという喜びはなかったんですね。クルマを自分は,ハッタリとか見栄で乗っていたように思う。最近はそういうことではなくて,自分で好きなように改造することによって,クルマを所有しているという実感があるんです」

 西氏のクルマライフやクルマに対する思い入れは,一般的なクルマユーザーからみると極端ではあるが,自動車の将来は,パソコン化・汎用品化する一方で,高級品化・ブランド品化の二極化が進むという見方がある中で,両極の一つである高級品・ブランド品としてのクルマづくりを考える上で参考になるところも多いに違いない。

マッピングすると日本車が中央に・・・

 例えば、筆者が面白いと思ったのは、西氏がこれまでに所有した自動車のどこに惹かれたのかをマッピングして見せたくだりだ。軸は二つあり、縦軸はフォーマルからカジュアル、横軸はスピードからセーフティである。西氏のアスキー時代にのっていた各クルマをプロットすると,西氏が最初に所有した日本車の「シーマ」は中央部にマッピングされている(図1参照)。

図1 西氏が過去(会社時代)に所有していた自動車のマッピング。中央はシーマ,左上:ベントレー,左下:NSX,右下:Volvo 240,右上:ロールス・ロイス
図1 西氏が過去(会社時代)に所有していた自動車のマッピング。中央はシーマ,左上:ベントレー,左下:NSX,右下:Volvo 240,右上:ロールス・ロイス (画像のクリックで拡大)

 そして西氏は,この中央部にいることを「落ち着きが良かった」と表現する。ビジネスで乗る分には良かったのだが,そのうち,個人として所有するには何かに特化したクルマに乗りたくなる。そして,スポーティでフォーマルなクルマとして「ベントレー」を,よりスポーティなクルマとして「NSX」を,より安全なクルマとして「Volvo 240」を,さらに安全でよりフォーマルなクルマとして「ロールス・ロイス」という具合に,四隅に位置するクルマを所有するようになった。

 そして会社を辞めた後に,中古車を改造して所有するにいたった自動車をマッピングしてみると,中央部が存在していないことが分かる(図2参照)。前述したように,これらは西氏が本当の意味で好きになったクルマたちであり,傾向としてカジュアルで安全なクルマを志向している。

図2 西氏が現在所有している(または所有予定の)自動車のマッピング。左上:Daimler W6(ジャガー5300ccエンジン),左下:Lancia 832(フェラーリ3200cc改造エンジン,ラジエター増量,足回りもフェラーリ純正),ポルシェ928S4(5000ccエンジン,ケーニッヒスペシャルコンプリート),右上:Vandenplas Princess 4LR(ロールスロイス4000ccエンジン,エアコン交換),Daimlar Limousine(4000ccエンジンをXLR6000ccエンジンに換装予定),右下:Citoroen C5,Jeep M512,Humvee,Unimog U-1450
図2 西氏が現在所有している(または所有予定の)自動車のマッピング。左上:Daimler W6(ジャガー5300ccエンジン),左下:Lancia 832(フェラーリ3200cc改造エンジン,ラジエター増量,足回りもフェラーリ純正),ポルシェ928S4(5000ccエンジン,ケーニッヒスペシャルコンプリート),右上:Vandenplas Princess 4LR(ロールスロイス4000ccエンジン,エアコン交換),Daimlar Limousine(4000ccエンジンをXLR6000ccエンジンに換装予定),右下:Citoroen C5,Jeep M512,Humvee,Unimog U-1450 (画像のクリックで拡大)