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 採取されたそのままの漆は荒味(あらみ)と呼ばれ、樹皮片やゴミなどが混ざっている。この状態で取引されることもあるが、ある程度は漉して商品にすることが多い。いずれの場合も通常は漆桶に入っているが、ただ入れておくと表面から反応して黒化し、固まってしまう。そこで桶に渋引き和紙などで蓋をし、空気に触れないようにする。ただし採れたばかりの漆は発酵している状態なので、時々発酵による泡を抜く。

 荒味を漉す場合は麻布を使うのが本来だが、大量に処理する場合は遠心分離機を使い綿で漉す。この処理を施したものでも保存中にゴミやホコリが混入するため、塗の工程に入る前には、使う分だけその都度漉さなければならない。この際は和紙を使う。古来、丈夫な吉野紙が主に使用されてきたが、手漉き和紙の職人が減り年々高騰し、入手しにくくなっている。このため現代では、レーヨン紙を使うことが多い。


 本間は吉野紙を数枚重ね、外側はさらにレーヨン紙で包んで漉している。レーヨン紙の表面が滑らかなため吉野紙自体から出るケバが濾した漆に混ざりにくく、吉野紙単体で使うよりむしろ良いという。漉す際には、「漉し馬」と呼ばれる台を使うことになるが、量が少なければ片方を口で咥え、もう片方を手で捻って漉す。ここで、強く捻り最後まで漉し切ろうとすると、紙のケバが出てきてしまうため、程々のところでやめなければならない。残った漆は、漉す前の漆容器に戻すので無駄にはならない。

 荒味を漉してゴミを除去しただけの生漆(きうるし)は、主に下地用に使う。日本産漆の中では水分が多く乾きが速い「初辺漆」が下地に適している。中国産の生漆を使っている場合が多く、本間も下塗り以外の下地材と練る漆はそれを使う。

 ただし、中塗り・上塗りには、生漆は使えない。「盛辺漆」「遅辺漆」など、もともと水分が少ない漆を使うが、その水分をさらに減らす。まず「ナヤシ」。生漆に含まれている水分と主成分のウルシオールをよくかき混ぜ、なるべく均一になるよう調整する工程である。次が「クロメ」で、元々20%~25%ある水分をここで3~5%まで減らす。40℃程度(本間は37℃)の熱を加えて水分をゆっくり飛ばすのである。こうしてできた漆を素黒目(スグロメ)、黒目漆(クロメウルシ)、透き漆(スキウルシ)などと呼ぶ。透明感のある、濃い飴色の漆だ。