PR

 この標準化しないクローズドな部分が,ノキア,エリクソン,アルカテル,シーメンスといった統合型の欧州企業の通信機器メーカーにもたらしたメリットは,中国市場にGSM方式が導入された後に,各社のシェアがどうなったかを見れば明らかだ。携帯端末については,前述したように時間の経過と共に中国企業がシェアを伸ばしてきたが,無線基地局については,導入後10年たっても欧州企業が70%程度の高いシェアを維持し,価格も高いレベルで推移しているという。

自国よりも世界に出た華為

 中国には華為科技(Huawei)など高い競争力をつけて来ている通信機器メーカーが育ってきているが,彼らの「ホーム」であるにもかかわらず,欧州メーカーの壁は突き崩せていない。GSM方式が中国に導入されたのが1994年だが,当時,華為科技は交換機しか製造できなかった。2000年以降には無線基地局も造れるようになったが,すでに欧州メーカーが導入し終わってしまっているので,容易には置き換えられないのである。つまり,欧州メーカーが先行者優位の仕組みをうまく組み込めたことが実証された。

 考えさせられるのは,華為科技は,中国市場というよりは,まだインフラが整備されていないアフリカ諸国などに積極的に進出して,成果を挙げていることだ。同社は「世界の果てまで果敢に売りに行く」と言われているほどバイタリティがある(『日経エレクトロニクス』,2009年1月26日号,「脱・先進国至上主義」,p.40参照)。実績面でも,技術面では上のはずの日本の通信設備メーカーを売上高では抜いて,世界のトップ10のランクに入っている。「ホーム」で欧州メーカーのやり方を見てそれに学び,それと同じことを「アウェイ」でやっているということなのだろうか。

プラットフォームの内と外

 以上見てきた,欧州企業がGSM方式の中国導入で展開した戦略は,いわゆる「プラットフォーム戦略」の一形態である。プラットフォーム戦略については,当コラムでも過去に何回かとりあげてきたが(以前のコラム1コラム2),要は,オープンな領域を外部に持ちながら,内部にクローズな部分を組み込むことである。

 繰り返し述べてきたように,オープンな領域では,差異化をすることが困難であるために,同質化や大量生産の競争が激化して価格下落が進み,先進国企業にとっては開発コストを回収するのは難しくなる。それでも開発コストを負担していない後進国企業にとっては,収益性の高い魅力的な分野に映るので,参入企業が絶えず,ますます量的拡大,価格競争が激化して,価格がさらに下がるという悪循環になる。