PR

「内圧」の普遍性

 立本氏の「高座」を聴いた後,「内圧」のメカニズムは普遍性があって,様々なシーンに適用できることではないか,と考えていて,ある新聞記事に目が止まった。『日本経済新聞』1月19日付けの「経営の視点」というコラム(9面)で,編集委員の小柳建彦氏が書いた「携帯,危うい囲い込み競争」という記事である。

 同記事は,日本の携帯電話事業者の間で既存顧客を囲い込む新たな競争が繰り広げられているが,その手法に問題があるとする。例えば,基本料金の割引制度を導入しているが,解除するためには解除料がかかり,契約後1カ月以内に解除を宣言しないと自動更新になったりという「抜けにくさ」をきちんと顧客に通知せず,それを知らずに割引制度を利用する消費者が増えているという。こうした手法は,米国では「顧客の反発を通り越し適法性すら問われている」として,こう書く。

「顧客を縛るのではなく,自由にして利便を高める---。それこそが顧客囲い込みの王道であることを企業は肝に銘ずるべきだろう」。

 これまでの文脈から言うと,「顧客を縛る」というのは「外圧」,「自由にして利便性を高める」というのは「内圧」のメカニズム,ということになりそうだ。

 ここで考えてみたいのは,なぜ「外圧」(または「北風」)のようになってしまうのか,または,そのように顧客から見えてしまうのか,ということである。それは,ある種の余裕のなさなのかもしれない。競争に勝ちたい,すぐにでも利益を上げたいと焦るほど,顧客への利便性のアピールと利潤追求の関係が直接的,または距離が短くなってしまう。顧客からは,利便性の裏にあるギラギラした本音が丸見えになっているともいえよう。

 今回紹介した,欧州のGSM方式導入のケースに学ぶとしたら,「内圧」となる部分と利益の源泉となる差異化の部分(この場合インフラ事業)を分離して距離を空け,顧客には見えにくくするような工夫が必要になるということだろう。

 そういえば,日本には昔から「本音と建前」という言葉がある。「建前」というとよくないイメージがつきまとうが,もう少し,「建前」の研究をしたほうがよいのかもしれない。