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 第3に、その連携を契機として、日本のハイテク企業における「技術の目利き能力」はきびしく試されるだろう。デュー・ディリジェンスに先立って、その技術の本質にひそむ科学とその構造を分析しその技術の絶対優位性を見抜くには、ケンブリッジのベンチャー企業のチーフ・サイエンティストを超える力量が必要となる。したがって、分野を横断して「目利き能力」を持つ専門家チームを自社内に鍛えておくことが、これからの技術経営の中心課題となってくる。その意味において、博士号を取得したあと研究者ではなく企業のプロジェクト・リーダーになるキャリアパスは、その必要性がますます高まるだろう。

 かくてこれからの技術経営の中心課題は、「技術の目利き力」をいかに養うか、そしてそれを担保する組織をいかに維持するか、になるだろう。そこで本稿ではケンブリッジでおきたハイテク技術企業の集積化を舞台にしながら、「技術の目利き力」の本質を明らかにしていきたい。以下の筋書きで連載を進めていく。

 まず第2話、第3話において、「如何にしてケンブリッジにハイテク・ベンチャーの集積化が起き、どのようにして成功していったのか」をまとめておく。次に第4話、第5話において、あるケンブリッジ発ベンチャー企業を事例としながら、「目利き力」というセンスはどこからやってくるのかについて、示唆を与える。さらに第6話以後において、ブレークスルーのイノベーション論を展開し、その理論にもとづいて「目利き力の本質とは何か」を論じてみたい。

参考文献
1)The Cambridge Cluster Report 2006, http://www.libraryhouse.net/, Sept.2006.

―― 次回へ続く ――

著者紹介

山口栄一(やまぐち・えいいち) 同志社大学大学院ビジネス研究科 教授,同大学ITEC副センター長,ケンブリッジ大学クレアホール・客員フェロー
1955年福岡市生まれ。東京大学理学部物理学科卒業(1977年)、同大学院修士修了(1979年)。理学博士(1984年)。1979年、日本電信電話公社入社。米University of Notre Dame客員研究員(1984年-1985年)、NTT基礎研究所主任研究員・主幹研究員(1986年-1998年)、仏IMRA Europe招聘研究員(1993年-1998年)、21世紀政策研究所主席研究員・研究主幹(1999年-2003年)を歴任し、2003年より現職。科学技術振興機構 研究開発戦略センター特認フェロー(2006年~)、文部科学省トップ拠点形成委員会委員(2006年~)。 アークゾーン(1998年)、パウデック(2001年)、ALGAN(2005年)の3社のベンチャー企業を創業し、各社の取締役。近著に、『JR福知山線事故の本質―企業の社会的責任を科学から捉える』(NTT出版、2007年)『Recovering from Success: Innovation And Technology Management in Japan』(共著, Oxford University Press, 2006年)『イノベーション 破壊と共鳴』(NTT出版、2006年)など。研究室のWebサイトのURLは,http://www.doshisha-u.jp/~ey/

本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。