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承前

アマデウス・キャピタル社の誕生

写真7 アマデウス・キャピタル社。
ケンブリッジの市街地にある。

 連載第2話第3話に物語をつづったように、1969年のモット報告がきっかけを与えたあと、ケンブリッジ現象を現実に支えてきたのは、成功者たちであった。成功者がエンジェルに転じて、そのキャピタル・ゲインを次の有望なベンチャー企業に資本投下する。

 シリコン・バレーの場合、その最初のエンジェルとなったのはアーノルド・ベックマン(Arnold Beckman)である。彼は、ウィリアム・ショックレイ(William B. Shockley)に投資しショックレイ・セミコンダクタ(Shockley Semiconductor)社を創った。その後、そこからスピン・オフしたロバート・ノイス(Robert N. Noyce)らがフェアチャイルド・セミコンダクタ(Fairchild Semiconductor)社を起業。この会社がインテル(Intel)社をはじめとする数多くのベンチャー企業の結晶核となった。

 一方、ケンブリッジ現象においてベックマンとノイスの一人二役を演じたのがハーマン・ハウザーであった。ただし、彼のやり遂げた仕事自体は、むしろビル・ゲイツ(William Henry Gates III)やスティーブ・ジョブズ(Steven Paul Jobs)になぞらえるべきだろう。その意味において、シリコン・バレーで1955年から1980年におきたさまざまな現象が、ケンブリッジでは1978年から1983年にかけて濃密に凝縮した形で起きたといってよい。

 エイコーン社の初期の成功により、35歳にして6400万ポンド(当時の為替レートで約400億円)を手にした彼は、その資金によって、ARM社をはじめとする25社のハイテク・ベンチャー企業の設立にかかわる。そして1997年、彼は、アーリー・ステージのベンチャー企業を支援するために、アマデウス・キャピタル(Amadeus Capital Partners)社を共同で設立する(写真7)。このベンチャー・キャピタルが、その後のケンブリッジ現象をさらに加速させるのである。