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不景気こそ新産業を興すとき

 そこへこの不況である。けれど、景気が悪いときに次の産業が生まれるともいわれる。人材が流動化するためなどと言われるが、今こそそれを実現しなければならない。これから成長が見込める産業は、いくつもある。

 ただし、芽があれば、放って置いても勝手に大きく育つわけではなない。その芽を育てるための施策が必要だろう。

 ちなみにフランスでは、2008年には2007年より4000人も多い32万5700人が起業したという。企業のリストラを機に外に飛び出して、新たな会社を立ち上げることが多いそうだ。社会保障が充実しているからこそ、そんなリスクを冒せるのだろう。

 このような、安心して起業できる社会システムの構築が急務だろう。社会福祉だけではない。税制の改正、研究開発の強化、金融システムや教育制度の整備、さらには環境や社会福祉などの分野の需要喚起など、政府がイニシアティブを取るべき政策は数多くあると思うのである。

 短期的には、環境対応自動車の買い替え促進策が考えられる。ドイツではこの1月末から9年以上の中古車を環境対応の新車に買い替えた場合、1台当たり2500ユーロ(約32万円)を政府が支給する政策を実行している。このおかげか、2月の自動車販売数は前年同月比で2割も増したという。環境対応家電や地デジ対応テレビへの買い替え促進策も考慮に値するだろう。中国政府はすでに家電製品の購入額の13%を補助する「家電下郷(家電を農村に)」制度を導入している。

 二大産業を支える政策も必要だが、中長期的にはやはり、新たなイノベーションを引き起こすための投資が必要だろう。これによって、何とか産業モノカルチャーとも呼ぶべき脆弱な状況から抜け出したいところだ。ところが今、企業は収益悪化から研究開発などの投資を削減している。それを補うためにも、政府が主導してエネルギー環境分野や医療福祉分野、そして情報通信分野での研究開発とその実用化のサポート、さらにはそれらの海外市場への展開までを視野に入れた政策が必要になるだろう。

 公共投資のように、政府が一時的な需要を人為的に作り出す政策だけでは限度がある。そこから、政府が投資を誘導する政策への転換が必要なのではないだろうか。

藤末 健三(ふじすえ けんぞう)
早稲田大学客員教授 中国清華大学顧問 参議院議員
1964年熊本県生まれ。86年東京工業大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に行政官として入省。95年マサチューセッツ工科大学経営学大学院に留学、96年には同大学院とハーバード大学行政政治学大学院で修士号を取得。99年東京工業大学で学術博士号(Ph.D)を取得し通商産業省を退く。同年東京大学大学院工学系研究科専任講師に就任、2000年から同総合研究機構助教授。04年民主党参議院選挙に比例区で当選する。早稲田大学客員教授、中国の清華大学顧問も努める。公式ブログはhttp://www.fujisue.net
本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。