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図1:「Symposium on VLSI Technology」の論文テーマの推移。同シンポジウム委員会のデータ。
図1:「Symposium on VLSI Technology」の論文テーマの推移。同シンポジウム委員会のデータ。
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 2009年6月15日に開幕する「2009 Symposium on VLSI Technology」(Tech-On!特設サイト)は,これまでとは大きく様変わりしたものとなる。微細化以外の技術進化を志向する論文が格段に増える。Geや化合物半導体,グラフェンといった新材料や,新たな動作原理を利用した次世代トランジスタ技術の発表が相次ぐ。

 こうした変化は,現在の半導体業界を如実に反映したものといえそうだ。微細化を継続する余力のあるLSIメーカーが激減し,技術提携や事業統合が加速している。しかも,2008年下期以降の不況により,LSIメーカー各社は微細化投資を大幅に抑制した。この結果,LSIメーカーが微細化の腕を競いあう,という色彩が強かったVLSIシンポの中身が大きく変わった。

 今回,次の焦点となる28~22nm世代を講演タイトルに掲げているのは,米IBM Corp.連合や台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.(TSMC)など,数グループに限られる。高誘電率(high-k)ゲート絶縁膜やひずみSiといった微細化に欠かせないブースタ技術の発表も激減した。high-kは前回京都で開催された2007年の13件から5件に減り,ひずみSiは2007年の14件からわずか2件に減った(図1)。

 産業界の微細化競争のトーン・ダウンを突く形で躍進したのが,大学勢である。これまで,VLSIシンポでは,量産に近い完成度の高い論文を採択する傾向が強い一方,大学からの発表は採択されにくかったとの見方が強い。ところが,既存技術に代わる新たなアプローチを模索する必要が出てきたことから,デバイス・メーカーには手を伸ばしにくい新材料や新原理を取り入れた「大学の論文が採択されるチャンスが増えた」(プログラム委員で東京大学 教授の高木信一氏)。

 今回,大学の躍進が際立つセッションは大きく三つある。16日午前の「Session 6B(Beyond CMOS)」,17日午前の「Session 9B(Non-Classical Transistors)」,そして17日午後の「Session 12B(High Mobility Devices)」である。

 Session 6BとSession 9Bはいずれも,現行のMOS FETとは別の材料や動作原理を使うスイッチ素子をテーマとする。Session 6Bでは,CMOSとスピン機能素子の融合技術について東北大学が発表する【講演番号6B-1】ほか,米Purdue Universityがグラフェンを使ったトランジスタ技術について2件発表する【同6B-2と6B-3,後者はIBMとの連名】。Session 9Bでは,トンネル現象を利用した高速スイッチ素子を米University of California,Berkeleyが発表する【同9B-2】ほか,0.1Vという低電圧で駆動できる可能性を備えるトランジスタ技術をPurdue Universityが発表する【同9B-3】。

 Session 12Bでは,GeやIII-V族化合物半導体といったキャリヤ移動度の高いチャネル材料を使ったトランジスタ技術が披露される。ここでは,ウエーハの張り合わせによって薄膜ボディを備えるIII-V族チャネルFETを実現した東京大学の発表【講演番号12B-3】や,業界で初めてIII-V族チャネルとひずみ技術を融合したシンガポールNational University of Singaporeの発表【同12B-4】に注目が集まりそうだ。

 これらの新技術の大半は3~5年以上先を見据えたものであり,“本当にモノになるのか”については不透明な点が多い。それでも,これらの発表が次の技術進化を見定めるヒントを与えてくれることは間違いないだろう。装置メーカーや材料メーカーの技術者にとっては,“次のメシの種”を探す格好の機会となるはずだ。