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 次は自民党のマニフェストです。「中小企業対策・建設業の健全な育成」をみると、以下のような項目が並んでいます。

  • 小規模事業者共済=対象者を「共同経営者」まで拡大、すでに政府が法案作成済み
  • 商工会議所・商工会の機能強化=早急に抜本的な措置を講じる
  • 連帯保証人制度=自殺の原因となっている連帯保証人制度のあり方を見直す
  • 地元中小企業受注機会拡大=中小企業者向け官公需契約目標額を、昨年度契約実績から1兆円増の約5兆1993億円とする
  • 不当廉売対策=ガイドラインを見直す
  • 地域を支える建設業の健全な育成

 金融対策として「貸し渋り・貸しはがしを防ぐ」との内容もあります。

 こうして並べてみると、多くの方が「あまり変わらないんじゃない?」とお感じになるのではないでしょうか。もちろん、このマニフェストを書いている本人に聞けば、色々と違いがあるとおっしゃるでしょう。しかし、この世界にいる私からみても「何が違うの?」とのご指摘を受けても何ら不思議はない内容だと思うのです。

 ただ、「自分は中小企業に勤めている」と認識している方とお話をさせていただいていても、「中小企業政策に関しては極めて関心が低い」と思うことがしばしばです。さらに感じるのは、自分が中小企業と法的に定義される会社に勤めていると「明確に」認識されている方が意外なほど少ないことです。

ビジョンが明確でないから違いがわからない?

 そんな事情があるので、報道などでもあまり両党の中小企業対策の問題について語られることが少ないのかもしれません。けれど、私はとても重要な問題だし、マニフェストにある政策では足りないと思うのです。

 何が足りないのか。やはり、一番に挙げなくてはならないのは「手段はともかくゴールが明確になっていない」ということでしょう。どのような産業構造を作り、その中で中小企業がどのような位置づけにあるべきか。そのようなビジョンが明確になっておらず、両党とも既存の中小企業に対する一般的な支援政策を並べているに過ぎないのです。そのことが、両党の政策の違いをわかりにくくしているのではないでしょうか。

 そんなことを言うと、「ではお前のビジョンを見せてみろ」と逆に問われることになるでしょう。当然です。けれど正直にいえば、力不足を情けなく思いつつも私自身、答えを出せないでいるのです。おそらく中小企業庁の人たちも同じ状態なのでしょう。結局、次の産業構造とその中における中小企業のあり方についてのビジョンは、誰も示しきれてはいないのです。