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表面を磨くセンという道具は、刀匠が自作する。
表面を磨くセンという道具は、刀匠が自作する。

 しかも、その担い手になるには多くの困難がある。今でも一般に350人から400人の刀匠がいるとされるが、その一員となるためには、すでに作刀許可を持つ刀匠のもとで4年以上修業をした上で都道府県の教育委員会の推薦を取り付け、毎年1回、9月に行なわれる文化庁主催の「美術刀剣刀匠技術保存研修会」を受講し修了しなければならない。研修会とは言うものの、実際は受講者の作刀技術を見極める実地試験のようなものである。そこで、講師たちに技術が未熟と判断されると途中でも受講停止を言い渡され、翌年再受講しなければならない。無事受講を修了し、作刀許可を持つと晴れて刀匠となる。

 その先がまた厳しい。刀剣の需要の少ない現代において、作刀のみで暮らして行ける刀匠はほんの一握りにすぎないからだ。実際、修業を経て資格を得ながらも、ほとんど作刀は行なっていない刀匠がかなりの数にのぼるという。

図14

 さまざまな面から見て逆風の状況にもかかわらず、ふるいにふるわれた少数精鋭の刀匠たちは、文化庁の規定に従い、二尺以上の刀、太刀などは月に二振り、二尺以下の脇差し、短刀などは月に三振りまで、という原則の範囲で作刀を続けている。伝統工芸の世界において、作り手の高齢化、後継者不足は顕在化しているが、刀剣界では、他に比べればまだ若い作り手の割合も多いようだ。日本刀には、伝統文化などあまり学んだこともない若い人さえも惹き付ける、普遍的な魅力が備わっているのだろうか。

 そう想像したくなるほど、日本人と日本刀の関係は長い。その原型が現れたのは何と900年近くも前の、平安末期なのである。