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平均年齢47歳の部署

 鈴木は前田と一緒に会場を出てロビーにある椅子に座った。
「鈴木さん,開発購買って何やっている部署か知ってる?」
「いや,あまりよく知らないんです」。

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 鈴木にとって開発購買グループは,サプライヤーから提案されたVA・VE提案の回答を定期的にフォローする部署,という程度のつながりしかなかった。鈴木からみると,開発購買は蝙蝠,というよりも設計他の部署から年をとった人が行く管理部門的な受け皿のようにしか思えなかった。
「そうだね。昨年できたばかりの部署だしね」。前田は続ける。「開発購買っていうのは,開発上流段階で品質・コスト・納期の作り込みをして,特にコスト面で今までにないような効果をもたらしていこうという活動,と一応部内では位置付けられているけど。要するに,開発部門にいかに安く作れる設計をしてもらうか,働きかける仕事だね。だから鈴木さんが知っているように,VA・VE提案の回答をフォローしたり,ノウハウ集を整備したりしている。まだまだだけどね。だけど,平均年齢47歳って信じられる?」
「想像つきません」。鈴木は答える。
「皆いい人だ。昔は一線で活躍していたし,特に設計出身者はもう少しで主任研究員か課長になれるところだった人たち,出世争いに負けちゃった人たちの処遇に困った上の人たちが,いい受け皿部署ができたって,喜んで送り出している。正直言って,上がり間近の人たちばかり」。
「大変ですね。でも前田さんは今の部署でも楽しんでいるようですけど」。
「うん,もともとそういう性格だしね。それに,本当に興味深い仕事だよ。自分がやりたいようにやらせてもらえるし,これからだから,色々なことを試してみようと思っていてね」。

「例えば?どんなことですか?」鈴木が聞く。
「さっき黒須さんの技術展示会あったよね,今日の展示で三つぐらいテーマを思いついちゃった。早速サンプル作って設計に持ち込むよ。そう言えば鈴木さん今度のハイエンド機種の担当だって言ってたよね? インサート成形の提案品サンプル作って持っていくよ。来週にはできると思うから」。
「えっ,それってさっき田中さんからも言われましたよ。新機種であの技術使えないかって? ちょうど私もいろいろ考えていたところだったんですよ。サンプル来週にできるんですか? 早いですね」。
「うん,実は昔から考えていたんだけど,対応可能な会社があるかどうか分からなくて,異動したときにすぐに田中さんに相談したんだよね。そしたら黒須がいいんじゃないかって。それで黒須に話持ちかけたら,すぐに検討したいっていう話になってね。彼らにとっても仕事が増える話だからね。もちろん田中さんは黒須以外も紹介してくれたよ。彼は3年後にはこの新技術が一般的なものになっているだろうって,その時の発注シェアも既に考えているよ」。

「えっ。じゃあ,開発購買グループは設計が必要な情報が分かっている,ってことじゃないですか?」
「うん。そういう努力と感覚,スピード感が持てるメンバーはね」。
「それに,サンプルを作る予算とかも持っていて時間もそこそこある。面白そうな部署じゃないですか?」
「本当にそう思うかい?」前田が鈴木に尋ねた。(以下次回)