言えない大事
目次
-
物から事へ
「なんだってェ,本当かい,そりゃあ」。今回は私もびっくりです。部長の話では,何でも付き合いのある鋳物メーカーが,とんでもないものを開発したというのです。「うそ偽りのない話さ。うちで使ってるあの鋳物の分,1.2ミリの板厚が半分になるってんだからすごいじゃないか」。半分の厚とは,これはすごい話。ただ,強…
-
新生ジレンマ
「ったく、しようがねえナァ、そんな事を心配してたら、新しいビジネスなんて、何もできないじゃないか。なあ、次郎さんよ」。不満顔で、部長がまくしたてます。「確かに、今までは世話になった。そりゃあ解るが、ここまでちゃんと儲かった、それも事実じゃないか、そう言って何が悪いんでェ! 第一、代理店といっても全…
-
幸せの順番
「次郎さん,次郎さん,開発の藤田君,見なかった」。お局がどうやら人探しみたいねですぜ。「藤田かい? 見てないけど,どうかしたかい」「いや,ちょっと私用な用事でね。見てないならいいの,じゅあね」。何だか,いつものお局らしくなく,どことなく歯切れが悪いようですぜ。
-
開発の免罪符
何か開発部長が真剣に,部員と話していますよ。「そりゃあ,お前の気持ちも分かるし,いいたいこともよくわけるけどヨ,ダメならダメで次また新しいことに挑戦すりゃあいいことだろう」。どうやら部長がある開発テーマにストップをかけているみたいで,なかなか部員も収まらない様子。「おお!ジローさん,ちょうどいいや…
-
コスト無縁の法則
「よおー,やったぜジローさんよ」、開発部長が珍しく上機嫌,不気味です。「そんなことより,例の開発だよ!あの役員からバッチリとはんこもらったぜ」。採算が合わないと,さんざん反対されてたやつ。通りで上機嫌なわけ。「どうやって説得したんだい?」,「よくぞ聞いてくれました。要するにコストがかからなきゃいい…
-
風呂敷は大きく
大風呂敷を広げるなんて言葉があります。大ぼらを吹くとか,大言壮語するなんて,あまり良くない意味で使われたりします。しかし,この大風呂敷ってやつも必要なんじゃないかと思うことがあります。というのも,こないだ開発部長のいっつあんとこんな話になりましてネ。「最近,うちの連中が出すアイデアが,どうにも小ぢ…
-
三上
「開発がうまくいく組織作りってどうやったらいいんでしょうか?」。最近入社した中国人の欧陽春君が聞いてきました。さすが中国でも有名なエリート大学を卒業しているだけあって,難しい質問をぶつけてきます。「そうだなあ。何て言やあいいのか。私の体験談になっちまうけどいいかな?」「はい,お願いします」「私がまだ…
-
改めまして登場人物の紹介
はじめまして,佐々木次郎と申します。これから日本のTech-On!読者の皆さんに「言えない大事」というマンガをお届けすることになりました。最初ですから,自己紹介がてらちょっとご案内いたします。このマンガは私が長いサラリーマン生活の中で思った事,気付いた事,教訓等を思いつくままに書き記したものをマン…
-
赤信号はちゃんと止まれ
何やら、部長がブツブツ言っていますヨ。「オイオイ、独り言とは、何かあったのかい」。「次郎さん、ちょっとしたことだが、気になることが、どうも増えているような気がするんだが…」。同じようなこと、アタシも気になっていたんです。「最近のシト、横断歩道を渡るとき、全くクルマを気にしないでいるようなんだが、危…
-
消去上書き
「大丈夫、大丈夫よ。そんな落ち込まないで。情報なんていつも更新されているのだから。消えてしまった情報も、もう使わないものかもしれないわ。すぐに新しい情報がつくられて、みんながアクセルできるサーバーのフォルダにまた加えられるのよ。
-
継続はチカラ
「次郎さん次郎さん、覚えてるかいあの開発。時間はかかったがうまくいきそうなんだ。あきらめずに続けて、本当に良かったぜェ」。部長が勇んで報告に来ましたヨ。「よい材料がなくて、あれこれ試してもう何年になるだろう。担当も何人目だろう。そんなことも忘れるくらい、長かったよなァ。でも、頑張ったカイがあったん…
-
数字本願
お局がおかんむりです。「だってそうでしょう、次郎さん。何でもかんでも数字で示せって、何言ってんのよォ」。「おいおい、どうした、またあの役員かァ」。どうやら、例の役員、またお局を怒らせちまったようですヨ。「確かに、数字で示せ、たまにはいいかもしれないけれど、やれ確率はどうか、可能性を数字で示せ、揚げ…
-
分水嶺
久しぶりに取った休暇から部長が帰ってきてのお土産話。何かを感じてきたようです。「次郎さんよ、分水嶺って知ってるかい? そうそう、河川の源流が山脈の頂点を境に分かれているところサ。その分水嶺がちゃんと分かるところを鉄道で行ったんだ。いやあ、よかったぜェ。トコトコとローカル線で緩やかな勾配を登りきった…
-
任期が短すぎないか
「居座るのも困るが、すぐいなくなるのも困る。ええっ次郎さんよォ、任期てェのは、一体、どのくらいが適正なんだろうナァ」。部長が変なことを聞いてきます。「どうしたのサ。任期って、どこの誰の任期だィ」。「いや、業界の会合で立ち上げた研究会。知ってるだろう、次世代製品を考えるてェ、そのメンバーだった会社の…
-
気位と意地の違い
最近、気位という言葉、妙に気になりましてネ、ついこの間もこんなことが…。「次郎さんよ、ったく、あの会社にも困ったもんだ。ええっ、気位ばっかりじゃあメシは食えねえじゃないか」。何やら、共同で事業を進めようとしているらしいのですが、先方の会社のご担当、相当に気位が高く、うまくいっていないようなんですナ…
-
先が見える人生
「ったく、やりにくいったらありゃしねえ。なあ、次郎さん」。部長、何かあったようで。「聞いてくれよ、例の役員なんだが、夕べ、わざわざ呼び出した挙句、なんて言ったと思う? 冗談じゃあねえよ、『これからの開発は慎重にやってくれたまえ』って、頼まれちまったのサ」。
-
すぐれ者は淡白質
「まったく、なんであいつは欲がないんだろう、ええっ、自分の手柄なのに、部下を立てるなんざァ、十年早いてェもんだぜェ」。部長、口先では怒っているようですが、目は嬉しそうですヨ。「ははあ、例のN君だろう。また何かホームランでもかっ飛ばしたんだな、部長」。どうやら当たりです。部長も、N君があんまり控え目…
-
クレーム様
部長が重い足取りでやってきました。「おいおい、どうしたィ、二日酔いかァ?」。「次郎さんはいいなあ。経企室長なんざァ、クレームもないだろうし…」。ははぁ、どうやらクレームが出たらしいですヨ。「次郎さんよォ、おれたち、『クレームゼロ』という標語を、ついこの間、部屋に張り出して、ガンバローって言ったばか…
-
無礼講…なのに
朝から、お局がアスパラを慰めています。「もう気にしなくていいわよ。さあ、夕べのことは忘れて、元気を出すのよ…」。こんな優しいお局、初めてですヨ。「どうした、アスパラ。ひょっとして、ボッタクリバーなんぞで、しこたま勘定取られたのかァ? もうすぐ給料日じゃないか、少しなら貸すぜェ」。「次郎さん、何をバ…
-
ごぼう抜き
「次郎さん、聞いたかい? お得意さんのあの会社、社長が代わるそうだが、なんと、25人抜きのごぼう抜きだそうだぜェ」。