言えない大事
目次
-
会社の悪口を外で言うな
朝から、お局の様子が変ですヨ。「どうしたのサ、体調でも悪いのかい?」。「……」。何も言わずに遠くを見ているような、そんな感じ、何かあったんでしょうナ。お昼の食堂、横に座ってもう一度、「どうしたんだい、余程、嫌なことでも…」、さえぎるように、「次郎さん、誰にも言わないでね、約束できる?」って言うんで…
-
開発のノーブレス・オブリージュ
「ったく、あんな大会社がこんな小さな会社に対抗して、一体、何が目的なんだろう? おれたちをいじめても何の得にもならないだろうに」。部長がくさっています。どうやら、業界ナンバーワンの大会社が、うちがコツコツ開発してきて、やっと日の目を見るようになった製品、それにぶつけるように、同様な製品を売り出すと…
-
よしの上塗り
「はっは、次郎さんよォ、良いことは重なるもんだぜェ。ほら、例の開発なんだが、あの材料、期待以上の性能なのサ。それもとびっきりなんだ」。嬉しそうに、部長が小躍りしながら入ってきましたヨ。よっぽど嬉しいんでしょう、「さあ、今日は俺のおごりだァネ、早々に例の赤提灯、行こうぜェ!」。やれやれ、まだ明るいう…
-
玉成ビジネス
部長が渋い顔して、ブツブツ言ってます。「次郎さんよ、中国の企業にお世話になっている例の部品、手直しが多くて、その打ち合わせで行ったり来たり。ははは、コストが安くなったと思ったら、そのメリットも相殺勘定になりそうだぜェ」。この話、どこぞで聞いたことがありますヨ。最初に見積もりをするてェと、ビックリす…
-
社長のひきこもり
いきなり社長に呼ばれるなんざァ嫌なもんですナ。何かドジなことでもあったのか、部下の不祥事でもあったのか、身構えてしまいますヨ。ひょっとして、アタシ自身が知らずに何かしでかしたのか、情けないですナァ、身に覚えがないのに、ビクビクするなんてシャレになりませんワナ。せん索しても始まりません、エイッとばか…
-
老兵を消すな
ここ数日、部長が暗いんですヨ。「部長、一体、どうしたんだ、何か、困ったことでもあるのかィ?」。「ああ、うん、いやぁ、何でもないさ。大丈夫、なんでもないからさァ」。話し掛けても生返事、何かあるようですゾ。
-
ひかれ者の小唄
「ええっ、次郎さんよ、ひかれ者の小唄ならまだいいが、ひねくれたってしようがないじゃあないか。どうしてあいつ、素直になれないのかナァ」。ひかれ者なんて、お江戸の時代に戻っちまいましたワナ。部長にいつも突っかかる、あのS君のことですヨ。どうもS君、往生際が悪いようです。
-
ころんだ子を叱るな
「なんで、そんなことで叱るのよォ!」。お局が、激怒していますヨ。アスパラが真っ青です。まあ、お局が怒るときはそれなりに筋が通っているのですが、今回、ちょっと過激ですヨ。一体、何があったんでしょう。
-
価値観の価値
「どうも、安い価格だけを前面に出しても、お客さんは乗ってこないんだ。一体、どうしたんだろう。今時、やはり安いのが一番じゃあないか、ナァ、そう思うだろう? 次郎さん」。部長が迷っているようですヨ。「これだけ景気が悪いのだから、安い方を選んでくれる、そう思ったのにそれが違うんだ。お客さんは何を考えてい…
-
言うのが花
「次郎さんよォ、言わぬが花って言うだろう? 全部が全部、言っちまったら身もフタもないてェこと、あるじゃあないか。それを、ぜ~んぶ言っちまうヤツがいる、とんでもねェ話さ」。のっけから、ちゃんと聞かなきゃあ分かりませんワナ。
-
知恵の経費
「一体、いくらかけたらいいんだろう、なあ、次郎さん」。珍しく、部長がまともな質問をしてきましたヨ。どんな話かというと、開発する中で創出される知財、つまり知的財産権(最近は産業財産権ともいうそうです)の出願に、どこまで、そして、どのくらいのお金をかけていいのか、そこが聞きたいのだそうです。この質問、…
-
変わり者の創造力
「ったくもう、あいつには手を焼くゼェ」。いきなり、部長が吠えながら入ってきました。「おいおい、誰がどうしたのさ? 」。「聞いてくれよ次郎さん、あの変わり者が、また変なコトをしてくれたんだ。それも、社長に直訴しちまうんだから、困ったもんだ」。どうやら、K君の勇み足らしいのですが…。
-
辛抱の相対性理論
今夜は1人で赤提灯。たまには、1人もいいもんですヨ。えっ、振られちまったのかって? 冗談じゃありませんヤネ、久しぶりに仕事も早めに片付いて、ポツンと飲むのもオツなもの、それでいいじゃありませんか。
-
分からない人 分かる人
「次郎さん、どうしたらいいんでしょう。上の人、どう説明しても分かってもらえないんです。何が分からないのか、どうして分からないのか、それが分からないんです」。いやいや、のっけから禅問答ですナ。アスパラ、よほど困っているようです。
-
子会社
「冗談じゃァねェ、ええっ、次郎さんよ。一体、この会社、子会社をどう思ってるんだィ!」。開発部長、何やら、えらい剣幕ですヨ。よほど、ひどい話なんでしょうナ。「大体、生みの親なら、子をかわいがる、育てようってェのが普通じゃねェか。それを、足を引っ張るような、そんなべらぼうな話、聞いたことァないゼェ!」…
-
絶滅危惧種
何も、動物や植物だけじゃァありませんヤネ、絶滅危惧種は。ビジネスの世界もしかり。業種にも、絶滅が危惧される種があると思うのですヨ。何で絶滅が心配されるような業種があると思ったか? 実は、こんなことがあったんです。
-
マイナスのキャリア
いわゆる順風満帆というのでしょうか、入社以来、ずうっと日の当たる部署を歩いてきたC君、初めての地方勤務ですヨ。ずっと本社にいて、誰が見ても将来の幹部候補生。それが地方に転勤になる、それも、将来を見据えての人事。アタシにはそう見えたし、C君を知っているシトたちも、これもキャリアを積むいい経験、そう思…
-
部署が違う?
最近、アタシ、一番腹が立ったのは、「部署が違う」、この言葉ですヨ。そうじゃありませんか、せっかく、ある提案を持っていったのに、「う~ん、そのようなご提案の話、こちらは部署が違うので、今度は、分かる部署の担当者に、改めて、説明して欲しいのですが」。
-
夢の責任
アスパラが泣きそうな顔で戻ってきました。恒例の、役員との面談です。「次郎さん、ボク、本当のことを言ったんです。将来、何になりたいか、どうしたいか。それを、正直に言ったんです。そしたら、『そんな夢みたいなこと言うんじゃない。どうせできないことを、無責任に言うもんじゃない』、そう言われたんです」。かわ…
-
前例があってたまるか
久し振りに、部長が嬉しそうです。「次郎さんよォ、今日は嬉しい! 嬉しいんだ!」。一体、何があったんでしょか。「あの専務に、新しい開発案件の説明をしたら、『う~ん、そりゃあ、前例がないな』って、そう言われたんだゼェ」。そりゃァ、嬉しい。嬉しいに決まってますワナ。だって、開発しているアタシ達にとって、…